12(慶安四年 七月十五日)「お前、薩摩のくノ一だね!」「薩摩? くノ一? はて? 何のことやら……」振り返りもせずに女が答えた。その声はまさに女の声だ。いや、これが本当の声なのか。「惚けるんじゃないよ! さっき桜湯であたしに触ったろう」「……」「こっちは全部お見通しだよ!」そう言って柘榴は懐に手を入れた。女は背を向けたまま、その場から動かない。「ふふふっ、そうかい。途中で女の時にはたいた香の匂いに気...