2 (慶安四年 七月三日)この日、江戸のくノ一「柘榴(ざくろ)」は、いつものように天秤棒を担ぎ、魚を売り歩いていた。そうして江戸市中を歩き回り、ここのところ特に目を引き始めた浪人達の言動に耳を傾けていた。「明日からどうやって食っていけと言うんじゃ……」「まったくじゃ、我らを体よく追い出し後は知らんぷりじゃ」「再仕官の道も難しく、辻斬りでもやるしかないぞ」「それもこれもみんな幕府のしたこと……」「あんな...