9(慶安四年 七月六日)朧火が針を打たれてから、一刻の時が流れようとしていた。刺さった針が動いたのか、それとも忍びの精神力のなせる技か、朧火は指先を僅かに動かすことが出来るようになっていた。紅蜂の目は、朧火の肉壺に集中して隙だらけだ。朧火の口元に微笑みが生まれた。その途端、朧火の両手から無数の糸が紅蜂に向かって放たれた。全裸に剥かれた体の何処にこれほどの糸を持っていたのか? 一瞬で紅蜂の上半身は、...