Category白百合忍法帳 1/5
白百合忍法帳
22(慶安四年 八月二十日)深夜の江戸に蒼い月が輝いている。三人のくノ一達は薩摩屋敷近くの川沿いを歩いていた。暫く歩くと川沿いに繋がれた、屋形船が見えてきた。三人は誰ともなく屋形船に乗り込んだ。「これで全て終わったねぇ、碧、柘榴」紅蜂が優しく二人に微笑んだ。「まさか四人いたとはねぇ、ちょっと驚いたよ」「何だかあたしばっかり迷惑かけちゃったみたいで……」まだ薄くアザの残る腕を柘榴が見つめた。「そんなこ...
- 5
- 0
白百合忍法帳
21(慶安四年 七月二十二日)碧の黒髪が如来の首を這い上がり、その顔を包み込もうとしていた。その時、如雷が大きく息を吸い込んだ。そして口を大きく開けるとそれを一気に吐き出した。それは最大級の ”魔響波” だった。鬼哭寺全体が震え、大きく軋みながら傾いていく。それにつれ柱がひしゃげ、支えを失った屋根が本堂を押し潰していった。もうもうと立ち昇る土煙と轟音。しかしその中に既に碧の姿はなかった。いち早く本堂か...
- 0
- 0
白百合忍法帳
20(慶安四年 七月二十二日)「薩摩のくノ一、如雷だと……」尼は如雷と名乗ると、懐から一枚の紙を取り出した。「これであろう、お前が喉から手が出るほど欲しがっている物は」そう言ってその紙を両手で広げると、碧に見せつけた。「うっ! あれは……」それは紛れもなく薩摩側の持つ、半分の連判状だった。「そうかい、薩摩のくノ一は四人いたのかい……」「うぬらの持っている連判状の半分、大人しく渡してもらおうか」「ふん、そ...
- 0
- 0
白百合忍法帳
19(慶安四年 七月十九日)自分の命と引き替えに、蜜夜叉は全身から骨をも溶かす消化液を出した。その途端、碧と接触している部分から白煙が立ち昇る。「くっ! 蜜夜叉……」「あたしが……あたしが、窒息するまでに……、お前も……溶けて、無く……なるよ……ぐあぁ~」碧が首に食い込んだを髪一気に引き絞った。「しかたがないねぇー!」蜜夜叉の全身がビクンと突っ張ったように硬直したかと思うと、全身脱力したように床に伸びた。蜜夜...
- 0
- 0
白百合忍法帳
18(慶安四年 七月十九日)「さて……、どこから溶かして欲しい。目か、鼻か、耳か……」背中に乗った碧の体に、その手足をまさに葛のように巻き付け、四肢の自由を奪った蜜夜叉の忍法 ”肉葛” 。そしてその全身から消化液を出し、動けぬ相手を骨まで溶かす忍法 ”苦女郎” 。蜜夜叉の顔は真後ろを向き、背中の碧に余裕の笑みを浮かべた。しかしその絶体絶命の状態で碧は、不敵に笑った。「蜜夜叉、お前はあたしを……怒らせたね」「ふっ...
- 0
- 0