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あなたの燃える手で

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白百合忍法帳

12
(慶安四年 七月十五日)

「お前、薩摩のくノ一だね!」
「薩摩? くノ一? はて? 何のことやら……」
振り返りもせずに女が答えた。
その声はまさに女の声だ。いや、これが本当の声なのか。
「惚けるんじゃないよ! さっき桜湯であたしに触ったろう」
「……」
「こっちは全部お見通しだよ!」
そう言って柘榴は懐に手を入れた。
女は背を向けたまま、その場から動かない。
「ふふふっ、そうかい。途中で女の時にはたいた香の匂いに気付き、銭湯で洗い流したつもりが、遅かったようだね」
女はゆっくりと振り返ると、柘榴と対面した。
「やっぱりお前は、薩摩の……」
「いかにも、あたしは薩摩の二重火。お察しの通りくノ一だよ。朧火の敵、
死んでもらうよ」
「ふん、あの世で朧火が待ってるよ!」
柘榴は懐に手を入れたまま身構えた。
「お前にこの二重火が倒せると、本気で思っているかい?」
「何?……」
二重火は丸腰のままで薄く笑った。そして大きく息を吸った。二重火の胸が大きく内側から盛り上がり、身長が伸びていく。そして唇を尖らせ、ゆっくりと長く息を吐き出した。すると女だった二重火の体に筋肉が付き、その全身はまるで仁王像のように逞しい体へと変化していった。
「なっ! こっ、これは一体……」
「薩摩忍法 ”金剛変” 」
そこに現れたのは、総髪の男の時よりも更に一回り大きな男の姿だった。
「この化け物め! 図体がでかくなったからって、この柘榴が臆するとでも思ったかい?」
「お前が柘榴か。朧火が楽しませてもらったらしいな。どれ、俺も楽しませてもらおうか……」
「ふん、何言ってやがる」
柘榴が懐から手を出しざまに手裏剣を投げた。空を切って黒い五つの手裏剣が二重火の胸に飛ぶ。
しかし、手裏剣はまるで石に当たったように跳ね返され地に落ちた。
「薩摩忍法 ”鬼殻”。この体は石そのもの。槍でも貫くことは出来ぬ」
「ちっ! 小癪な! こう見えても、武芸十八般に通じているあたしの得意技
は組み打ちなのさ」
柘榴は二重火を突き、蹴り、そして関節技を掛けにいった。しかしそのどれもが重厚な鎧のような皮膚に跳ね返された。
「どうした、武芸十八般。そこまでか?」
次の瞬間、簡単に接近を許す相手に柘榴は短刀を隠し持ち、その刃を思い切り二重火の鳩尾(みぞおち)に突き入れた。
確かに手応えが柘榴の腕に伝わった。
短刀の柄が皮膚に触れんばかりに刺さっている。
「とったー!」
「ふんっ! 馬鹿がぁ!」
柘榴の体が軽く一間近く飛ばされ、その場で気を失った。
刺さったと思えた短刀は刃が根元から折れ、二つになって転がっていた。
二重火は気を失って倒れている柘榴を黙って見下ろした。
「他愛もない奴よ。どれ、俺が可愛がってやろうかい」
二重火は柘榴を右手一本で鷲掴みにすると、海竜院の本堂に運び込んだ。

それを待っていたように、大粒の雨が江戸の町をしっとりと濡らし始めた。

Comments 3

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2008/09/25 (Thu) 19:16 | EDIT | REPLY |   
蛍月  
おめでとうございます

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
       ☆ Happy Birthday ☆
          ?? To Day

   これからも、よろしくお願いしますね・・・
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

2008/09/25 (Thu) 21:19 | EDIT | REPLY |   
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2008/09/25 (Thu) 21:41 | EDIT | REPLY |   

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土