34階でエレベーターを降りた冬香は、受付で案内されたとおりに院長室の前まできた。彼女の来訪は受付から連絡が行っているはずだ。冬香はサングラスを外し、ポケットに入れるとドアをノックした。「どうぞ……」静寂を保つ廊下で冬香はゆっくりとノブを回した。小さな金属音と共にドアがわずかに開き、白衣姿の懐かしい顔が現れた。「久しぶりね、冬香。何年ぶり? 元気だった?」「真弓……。ちょうど10年ぶりよ」「大学卒業以来か...