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あなたの燃える手で

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白い魔女 2


4階でエレベーターを降りた冬香は、受付で案内されたとおりに院長室の前まできた。彼女の来訪は受付から連絡が行っているはずだ。
冬香はサングラスを外し、ポケットに入れるとドアをノックした。
「どうぞ……」
静寂を保つ廊下で冬香はゆっくりとノブを回した。小さな金属音と共にドアがわずかに開き、白衣姿の懐かしい顔が現れた。
「久しぶりね、冬香。何年ぶり? 元気だった?」
「真弓……。ちょうど10年ぶりよ」
「大学卒業以来かしら。あっ、違う。1度だけ新宿で食事をしたっけ」
「ううん、食事をしたのは2度よ。それも同じ店で」
「そうだっけ」
「そうよ、それでその後は……」
「いつものホテルね」
「それは憶えているのね」
2人はハグをすると、笑いながらソファに並んで座った。
「今。コーヒー入れるわね。インスタントだけど」
「うん、ありがとう」
真弓はコーヒーを入れに立ち上がった。
机の上に同じカップを並べると、コーヒーをスプーンですくった。
「もう、冬香。てっきり医者になるかと思っていたのに……」
「だってあなたには敵わないもの真弓。高校でも医大でも、いつも成績はあなたが上。結局あたしは1度も勝てなかった」
ポットから湯を注ぐ音と共に、香ばしい香りが部屋に広がった。
「だからって……」
真弓は両手にカップを持ち、1つを冬香の前に置くと自分も座わった。
「それに金銭的な問題もあったんだけどね」
「そう……。でもピアノだけは諦めなかったのね」
「偶然よ。あのコンクールだって、もう1度出たら勝てるかどうか」
「そんなことないわよ。冬香なら。絶対勝てるわ。それにもう押しも押されもしない有名ピアニストじゃない」
「そんな大げさよ、真弓」
「ううん、マスコミにも取り上げられて。あたしあなたのCD買ったのよ」
「本当? 真弓が買ってくれるなんて思ってもみなかったわ」
「本当よ、ほらっ」
真弓は机の引き出しから,CDを出すと冬香に見せた。
「あぁ、これ、この ” ジュリエットセレナーデ ”。これが一番好きだわ」
「ありがとう、嬉しいわ。とっても」

それから暫しの間、2人の話は続いた。
「でも嬉しかったわ、あなたから連絡を貰った時は、それで、相談って何? 1度診て欲しいって……。どこか悪いの?」
「実はね、絶対内緒にして欲しいんだけど」
冬香はそう言って念を押すと、恥ずかしそうに話し始めた。
「なんだかアソコが大きくなってきてるの」
「アソコ? アソコって?」
「だから、アソコよ。クリちゃん」
二人きりの部屋で、冬香は更に小声で言った。
「それ……、痛みとかはあるの?」
「それはないんだけど、なんだか気になって1度診てもらった方がいいかなって思って、それであなたに……」
「わかったわ」
冬香は真弓の唇が妖しく歪んだことに気づかない。
「絶対マスコミになんかは知られたくないの」
「大丈夫よ。もし嗅ぎつけられても病名なんかどうにでもなるから」
「よかった……、チョット安心したわ」
その時はまだ、コーヒーから暖かな湯気がたち昇っていた。

その頃、B棟に続きA棟を案内された美咲は、御堂と共にナースステーションに戻ってきた。
「とりあえず院長に連絡を入れとくわね」
御堂は院長室直通のホットラインを取り上げると、ボタンを2回押した。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土