△3ホテル「クイーンホリデー」の18階は、痛い程静まりかえっていた。ジャズの流れる店内に、Lのカクテルを作る硬質な音が心地よかった。Lは出来上がったグラスを、明美の前に押し出した。「どうぞ。ウォッカマティーニです」「ありがとう」突然、横の桜子が明美に話しかけてきた。「そのカクテル、007のカクテルなんですよ」「007の……?」意中の人に突然話かけられたような戸惑いを見せながら、明美が桜子を見た。「そ...