其の十七艶魔衆頭領『無空』と淫靡衆頭領『幻空』は、その日の夕刻、艶魔堂と淫靡楼をそれぞれ後にした。向かった先は外でもない、二つの谷の中間地点にある『濡髪山』だ。西の空が茜色の染まる頃、無空と幻空はこの山の中腹にある洞窟の奥で向かい合っていた。洞窟の中には太い蝋燭が数本、そして二人の間にも同じ蝋燭が一本、ユラユラと青白い炎を揺らしている。「久しぶりよのう、幻空」「この前ここで会ってから、かれこれ四、...