5茜色に変わった山の稜線に向かって、数羽の鳥が飛んでいく。露天風呂の小さな椅子に座った奈津に、女将は後ろからそっと湯を掛けた。それは和服を着ている自分が濡れないようにと、そんな感じの掛け方だ。仄かに硫黄の香る湯が奈津の肌を滑り落ち、石の床をサラサラと流れていく。「さっ、こちらへ」女将は奈津の手を取り、岩風呂へと導いた。「どうぞ、お入りくださいませ」「はい……」奈津は片手を女将とつなぎ、もう片手で前を...