三鳥居を潜ってから拝殿、本殿と歩き、ようやく尼僧の背中越しに、観文寺の弊殿(へいでん)が見えてきた。しかしその形は美鈴の想像とは違っていた。壁は白い土壁で、観音開に開いた窓からは、その壁の十分な厚みが感じられる。窓には格子がはまっており、屋根には黒く光る重そうな瓦が並んでいた。結果的にそれらが皆、神社建築と言うよりも "大きな蔵" を思わせる。2人は弊殿、いや蔵の入口の前で立ち止まった。「さぁ、こちら...