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あなたの燃える手で

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感悶寺 奥の院


鳥居を潜ってから拝殿、本殿と歩き、ようやく尼僧の背中越しに、観文寺の弊
殿(へいでん)が見えてきた。しかしその形は美鈴の想像とは違っていた。
壁は白い土壁で、観音開に開いた窓からは、その壁の十分な厚みが感じられ
る。窓には格子がはまっており、屋根には黒く光る重そうな瓦が並んでいた。
結果的にそれらが皆、神社建築と言うよりも "大きな蔵" を思わせる。

2人は弊殿、いや蔵の入口の前で立ち止まった。
「さぁ、こちらが淫魔退散修行を執り行う弊殿です。普段は単に退散行と言っ
ていますが……。手嶋さんにはこちらで寝起きして頂くことになります」
「えっ、ココでですか?」
目の前の黒鉄の扉には丸い鋲がいくつも打たれ、取っ手には大きな南京錠が施
錠されている。そしてその扉の上には、『感悶寺修業殿』と筆で書かれた大き
な看板が掛かっていた。
「見た目はこんなですが、中にはトイレもありますし、エアコンも完備されて
いますから……。」
「そうなんですか」
「えぇ、別に退散行の間だけですから、充分生活はしていけます」
「はぁ……」
尼僧は黒い扉に掛かった南京錠を開けると、美鈴に振り返った。
「さっ、中へどうぞ」
「は、はい、失礼します」


中に入ると、あたしはグルリと室内を見渡しました。
部屋は大小二部屋に別れていて、手前の大きい方は十畳、奥の小さい方は六畳
くらいでしょうか。そのどちらも必要以上にサッパリとして、一言で言えば
何もない部屋でした。
大きな部屋にはエアコンと扇風機。そして壁に掛かった振り子時計。そしてそ
の下にインターホンがあるだけです。
でも小さな部屋には机と本棚、布団の入った押し入れがあり、主立った生活は
こちらでするようになっているようです。
それでもバス、トイレ、洗面所はちゃんと別にありました。
全体的な造りとしては、天井は吹き抜けのように高く、その高い天井のすぐ下
には、古風な建築にありがちな太い梁が横たわっています。窓にはさっき見た
とおりに格子がはまり、外側には扉が付いていました。

「大変申し遅れました、わたしは夢天と申します」
彼女はあたしに振り返ると、両手を前で合わせ腰を深く折り曲げました。
「あっ、いえっ、こちらこそ、よろしくお願いします」
「夢天は、夢に天国の天と書きます」
「あぁ、夢天さんですね」
「他に2人の尼僧が居りますが、それはまたその時に。それから……、携帯電
話などをお預かりいたします」
「えっ? 携帯を?」
「はい。修行には必要ありませんし、外界との連絡は修行の妨げになりますの
で、全ての通信機器はお預かりすることになっています」
言われれば当然と思い、あたしはスマホを夢天さんに渡しました。
「はい、お預かりしますね。それから良ければシャワーでも浴びて、着替えは
そこにありますから……」
「お世話になります」
「修業は明日からになります。後ほど夕食を運ばせます。それから、机に問診
票がありますから、記入しておいて下さいね」
「はい……」
それだけ言うと、夢天さんは蔵から出て行きました。
彼女が外に出ると、 "ガチャ" っという南京錠を掛ける音が聞こえました。
それはあたしが、この蔵に幽閉されたことを意味していたのです。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土