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あなたの燃える手で

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ブルーチョコレート

7  隣の人妻編
桜の花も散って、もうすっかり緑の葉が幅をきかせるようになった。
風の吹き溜まるところには、今でも時々数枚の花びらを見ることができた。

期末試験も終わり、無事一つ上の学年に上がったあたしは、意気揚々と自転
車で夢の森駅に向かていた。しかしそこには、とんでもない落とし穴が待っ
ていたのだ。
落とし穴、それは夢の森商店街を自転車で走っていた時のことだった。
ちょうど商店街の中程だろうか、そこには昨日までなかった水たまりがあっ
て、新学期を迎えて心機一転、半分抜けたていたママチャリの空気をパンパ
ンに入れていたあたしは、それこそ意気揚々とスピードに乗った自転車で、
その水たまりに突っ込んだのだった。
あたし的には "イェーイ!" といった感じで走り抜けるはずだった。そう、
そうなるはずだったのだ。しかし現実は、水たまりの中に落ちていた何かに
タイヤが乗り上げ、あたしは前につんのめるように半回転したのだ。
横に倒れるでもなく、乗り上げてそのまま進むのでもない、前につんのめ
る、つまり自転車ごとでんぐり返しをしたわけだ。
それでも前に両手をついて、無事着地に成功したつもりだった。制服だって
それほど濡れず、その姿は土下座状態だったけど、膝を擦りむいたくらいで
済んだ、と思う間もなく右手に違和感が……。
なんだ? この違和感は……。見れば、右手首がポッキリと逝っていた。

一週間後、右手首には金属のプレートが入っていた。
そして簡易ギプス、簡易ギプスというのは、腕の下半分を支える筒を縦半分
に切った、半円筒形のプラスチック製のギプスのことで、それを包帯で腕に
巻き付けているため、あたしの肘から下は白い繭と化していた。

そしてそれは、そんな手でむかえた土曜日の昼下がりのことだった。
「あらぁ、レナちゃん。こんにちは」
そう声をかけて近づいてきたのは、お隣の安藤郁美さんだった。
「あっ、はい、こんにちは」
「どうしたのぉ? レナちゃん、その腕ぇ……」
安藤さんはあたしの包帯グルグル巻きの右腕を見て、目を丸くしている。
「はぁ、ちょっとぉ、自転車でころんじゃって……」
「骨折……?」
「はい、綺麗にポッキリと」
「あらぁ、右じゃ色々不便でしょう?」
「はい。指はなんとも無いのに、このギプスが指先まであるので、何にもで
きないです」
あたしは指先まで包帯の巻かれた、繭の様な右腕を見せた。
「まぁ、可哀想にぃ。それじゃご飯食べるのも大変ねぇ」
「はい、今日は両親がお芝居を見に行っていて」
「あらっ、それじゃぁ食べてないの?」
「えぇ……、まぁ……」
「まぁ、それじゃウチでなにか食べる? おばさん食べさせてあげる」
「そんなっ、悪いですよぉ」
「どうしてぇ、そんな怪我してるんだから、しょうがないじゃ無い」
「でもぉ~」
「今日はちょっと肌寒いから、とりあえず中に入りましょう。ねっ」
「えっ、えぇ……」
そうしてあたしはおばさんに左手を引かれ、お隣さんにお邪魔することにな
った。

おばさんはあたしを家に入れるまで、繋いだ左手を離さなかった。


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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土