2イングリットは、立ち止まった部屋の前でゆっくりと言った。「えっ? 部屋って……?」彼女は厚い木のドアを開けると、無言で先に入った。「お入りなさい」蘭が部屋に入ると音もなく扉が閉まった。そこは10畳程の広さの部屋だった。レンガ色のカーペットに白い壁。窓にはモスグリーンのカーテン。隅にはダブルベッド、中央には艶のある骨董品のような机、その上には大きく口を開け、とぐろを巻いた黒い蛇の置物が置かれている。そ...