2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

白い魔女

41
ゆかりがこの『夢の森病院』へ来てから1ヶ月が経とうとしていた。
この病院の外来棟と入院棟の間にある大銀杏の回りにはベンチがあり、ちょっとした公園を思わせる作りになっていた。
その大銀杏に太陽が真上から降り注いでいる。まだ暖かさにはほど遠いが、中庭にある大銀杏の鎧のような枝からは、若葉が泡立つようにその可愛らしい姿を見せ始めていた。
今ゆかりはその大銀杏の作る影の中にいた。そのすぐ後には、寄り添うような御堂雪絵の姿があった。
御堂はゆかりの片腕を取ると、自分の腰に掴まるように回させた。ゆかりの体が御堂に密着する。
「どう? 苦しい」
「はい。そろそろトイレに行かせて下さい」
「だめよ。何のためにオムツをしてきたの?」
この日ゆかりは病室で500ccの浣腸をされ、蜜壺にリモコンバイブを入れられた儘、この中庭まで連れてこられていた。
中庭には8人程の入院患者達がベンチに腰掛け、あるいは散歩をしながら、思い思いの時間を過ごしている。
彼らから見れば、ゆかりも立派な患者に見えた。なにしろ片手をお腹に当てて、苦しそうな顔をしていたのだから。
ゆかりは近くのベンチにうずくまるように腰掛けた。御堂がポケットの中でリモコンのスイッチを操り、バイブが強く弱くゆかりを苦しめた。オムツの中でくぐもった音は、隣で聞き耳を立てても聞こえない。
ゆかりは横に立っている御堂を見上げた。
「お願いです。トイレに」
御堂はゆかりの隣にゆっくりと腰を下ろした。
「だめよ。ここでお漏らしするまで帰らないわよ」
ゆかりを挟む2棟の病室の窓から、中庭を見下ろす患者達の目が、全て自分を見ているような気がする。ゆかりは堪らず視線を地に落とした。

遠くで救急車のサイレンが聞こえる。反響していた音は、駅の方角からだんだん大きくなってくる。どうやらこの病院に向かっている気配だ。その音にゆかりは首を上げた。御堂も音のする方角に振り返っている。
「急患かしら」

サイレンはこの病院の正面玄関で沈黙した。ヘルメット姿の救急隊員が素早くストッチャーを降ろすと、運び込まれた人間をその上に移動させた。
歳は23~24歳位だろうか。多少派手なメイクを施したその顔は、目を閉じたまま荒い呼吸を繰り返し、今は乱れてしまった軽いウェーブの栗毛色の髪が、肩口で呼吸と共に上下している。身につけている高級そうな靴やアクセリー、バッグはどこかのお嬢様を思わせた。汚れてしまった仕立てのいいブルーのジャケット。特にアイボリーのパンツは黒く汚れ、見る影もない。
救急隊員は何かを早口で看護士達に伝えながら、素早く作業をこなしている。
やがてストレチャーの乾いた音が、受付の前を通り過ぎていった。

Comments 0

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土