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あなたの燃える手で

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官能作家 二階堂月子

【3】
「ホントに暑いわねぇ、早く涼しくならないかしら……、ねぇ、陽子ちゃん」
そう言って先生は、白い日傘越しに快晴の空を見上げた。
「そうですね。心からそう思います」
日傘など持ち合わせていないあたしは、首筋の汗をハンカチで拭いた。
斜め後ろから見る先生の首筋。女のあたしでもドキッとするくらい悩ましい。
舌でそっと舐め上げたら、どんな声を出すだろう……。

やがてあたし達は大きな屋敷の前を通った。
それはこの住宅地の中でも一際大きな、『氷見川麗子』の豪邸だった。
「いつ見ても大きいわねぇ、この家……」
そりゃそうでしょう。家の大きさが変わるわけがない。と思ったが……。
「ホントに大きいですよね。何でも氷見川麗子って、大きな会社の社長さんら
しいですよ。それにここにはメイドさんもいるとか」
「あらっ、ホント? 羨ましいわ。まっ、あたしには陽子ちゃんがいるけど」
先生は日傘の下で、ツンと鼻を高くした。
あたしはメイド? メイドだったのかい?
その時、氷見川邸の中から何やらガラスの割れる音がした。そして直後に、
「あぁー、すいませぇ~ん、麗子様ぁ」
と言う声が聞こえたが、あれがそのメイドの声だろうか。だとしたら、きっと
コップでも落として割ったのだろう。
そそっかしそうなメイドだ。あたしは心の中でクスッと笑った。


二階堂月子という作家が、この街に住んでいることは誰も知らない。
それは近所の、いや隣の住人でさえ知らないだろう。
実は先生の本名は二階堂明子で、二階堂月子はペンネームだ。明子の明るいと
いう字では官能作家らしくないということで、明るいという字を半分にして月
子としたらしい。
だから表札には、当然本名である二階堂明子と書かれているわけだ。

先生の家は、さっきの氷見川邸から5分ほど歩いたところにある。先生の家
は、和風建築の趣のある家だ。庭の一部には紅葉や竹も生えていたり
する。これで池があって錦鯉でも泳いでいたら、ここは小京都と化すだろう。
先生は門を開けると、白い砂利から浮き上がった踏み石の上を歩き、玄関の前
で日傘をたたんだ。
そして引き戸の玄関ドアを開けると中に入った。
「わぁ、熱が籠もってるわねぇ。陽子ちゃん。先に入ってエアコン付けて」
「は、はい……」
あたしは熱の籠もった室内に突撃し、エアコンのスイッチを入れた。
まったく、あたしは鉄砲玉かい?

部屋も涼しくなり、あたし達はようやく人心地ついた。
今そんなあたしと先生は、和室の座卓に置かれた冷たい麦茶を挟んで向かい
合っている。
「あのう……、先生。ホントに……、するんですか……?」
「えっ? するって何を……?」
「だから、その……、アレを、です」
「アレって?」
「先生言ったじゃないですか。女同士の体験をしてみたいって。そう言って相
談してきたのは先生ですよ」
「そうだったわね。ゴメンなさい、あたしったら……。で、どうする?」
「どうするって……」

あたしとしては、ヤル気満々なんですけど……、先生。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土