2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

官能作家 二階堂月子

【2】
あたしは夢女を卒業して、夢女って言うのは『夢の森女子大学』の通称なんだ
けど、そこを卒業してそのまま先生の所に来た。
先生は言うまでもなく女流官能作家……。なんだけど……。なんて言うかその
最近スランプらしくて……、あたしとしてはチョット心配している。

先生はアイスコーヒーを、ゴクゴクとグラスの半分ほど一気に飲んだ。
「ねぇ、陽子ちゃん。やっぱり頭の中だけじゃ無理なのかしら……」
「はい?」
あたしは突然の意味不明の申し出に、少し混乱した。
「だからね、その、何て言うか。頭の中で想像してるだけじゃ、書けないのか
しらってことよ」
「はぁ……、それって実際に……体験してみるってこと、ですか……?」
「そうよ、実際に体験してみるの。そうすれば……」
あぁ、なんて嬉しい申し出。
あたしは幸せの予感を感じた。でももう少し聞きたいことがある。
「あのう……、それは誰と、です?」
「えっ? 誰って……、それは……」
「先生、面白いアイデアだとは思いますけど、あまりに荒唐無稽で。官能小説
の内容を体験するってことはですね、これはもう絶対……」
「わかってる、わかってるわよ。陽子ちゃんの言いたいことはわかってるつも
りよ。だからね、だからこそ、相談なんだけどね」
「はい? 相談?」
「そう、相談。それで今日はココに来てもらったんだから」
先生はここで、アイスコーヒーをゴクリと飲んだ。
「そのぉ、言いにくいんだけどね……。陽子ちゃんに、そのお相手をと……」
「そのお相手。お相手って言うのは、体験するお相手ってコトですか」
「うん。そう。そういうこと。だって、こんなこと頼めるの、陽子ちゃんしか
いないでしょう」
願ったり叶ったりとは、こういうコトを言うのだろう。
まさか、まさか先生の方からそんなことを言ってくるなんて……。
あたしはもう小躍りでもしたい気分だった。
「でも先生、女同士でそんなこと……。大丈夫ですかぁ?」
あぁ、あたしったら。何で、何でこんなコト言うのかしら。二つ返事でOKし
ちゃえばいいのに……。
でもここは慎重に。野球は9回ツーアウトからって言うし。
「先生はそういう経験っていうのは……、つまり女同士の……」
「無いって言えば無いわねぇ。でもね、昔から興味はあったのよ」
「はぁ、そうなんですか」
「ねぇ、どう? 陽子ちゃん」
「どう? って。あたしとしては先生のお役に立てるなら……って」
「ホント? それじゃいいのね」
「はぁ、はい。お引き受けします」
「ありがとう、陽子ちゃん。さすがあたし助手よね。そうでなくちゃね」
まったく、あたしより先生の方が喜んじゃって……。
まっ、そんなところも可愛いんだけどね。

「それじゃ、早速……」
「えっ、早速って。今からですか?」
「そうよ、締め切りまで一週間しかないんだから」
それをここで言うか。

あたし達はアマデウスっていうカフェ出ると、商店街を住宅街の方へと歩い
て行った。

Comments 0

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土