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あなたの燃える手で

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官能作家 二階堂月子

☆☆☆100万ヒット記念作品 ☆☆☆



官能作家 二階堂



プロローグ
「お待たせしました、アイスコーヒーです」
ミニスカートから綺麗な脚を見せたショートカットの女の子が、”コトン” と小
さな音を立てて、あたしの前に曇ったグラスを置いた。
あたしはガムシロとミルクを入れると、白いストローで中身を掻き回しなが
ら、厨房へと戻っていく彼女を白い太腿を見ていた。

「先生どうしたのかなぁ? 10分も遅刻するなんて……」
両肘をテーブルについて、何気なく駅前の幹線道路に目をやる。
その道路の向こうにあるバスターミナルから、長い横断歩道を渡ってくる人の
中に、あたしは待ち人である『二階堂月子』を探していた。

【1】
結局先生が来たのは、それから20分後だった。
盛夏用の白い薄物の着物。その腰に巻いた薄桃色の帯。そのどちらにも、何や
ら模様が描かれているが、あたしには幾何学模様にしか見えなかった。
夏らしくアップにした髪の、白いうなじのほつれ毛が妙に色っぽい。
もともと和風な顔をした先生が、これで首筋に手をやり、チョット俯いてみせ
れば、なかなかの美人に見えるはずだ。

先生は白い日傘を隣の椅子に立てかけた。
「ごめんなさいね陽子ちゃん」
先生はチョット眉根に皺を寄せ、申し訳なさそうな表情のままあたしの正面に
腰を下ろした。
そしてあたしの前の、空になりかけたグラスに目をやった。既にグラスの下の
コースターは、しっとりと濡れている。
「あらっ、もう飲んじゃったのね……。もう1杯飲む? 陽子ちゃん」
「えっ、えぇ、それじゃ、いただきます」
「すみません……」
先生はさっきの女の子を呼ぶと、アイスコーヒーを二つ注文した。
「はい、アイスコーヒーを二つですね……」
そう言うとあたしと先生に何やら熱い視線を送り、厨房へと戻っていった。

「暑いわねぇ、今年は特に暑いわ」
「もう先生ったら、去年も同じこと言ってましたよ」
「あらっ、そうだったかしら? でももう1年になるのねぇ、陽子ちゃんが新
卒であたしの所来て」
「はい」
「陽子ちゃん、最初からしっかりしてたもんねぇ。真東陽子です。よろしくお
願いします。なんて言っちゃって」
「普通ですよぉ」
「そうなの? 今でもそうだけど、陽子ちゃんの方があたしなんかよりずっと
大人だもんねぇ……、ホント」
「そんなっ、あたしは先生の助手が天職だと思ってますから……」
「またそんなこと言っちゃってぇ。ケーキも食べる?」
「いえっ、今は……。それより書けました? 新作の『蕩け妻』」
「あともう少し」
「大丈夫ですかぁ、締め切り迫ってますよ」
「もう、出版社みたいなこと言わないでよ……」
「でも、来週ですから、締め切り。あと1週間ですよ」
「それはわかってるけど、書けないものはねぇ……、書けないし……」
「またそんなこと言って、先生」
先生の赤い唇がストローを咥え、アイスコーヒーを吸い上げた。
それにつられるように、あたしもストローに口を付けた。


あたしが先生の所に来たのには、理由が3つある。
1つ目は、自分が作家志望であるってこと。
2つ目は、作家でアシスタントの募集をしていたのが、先生だけだったこと。
3つ目は、先生があたしのタイプだっていうこと。あまり大きな声では言えな
いけど、あたしはそういう性癖の持ち主なのだ。特に年上の人で、先生のよう
な和風美人は大好物だ。
取り敢えずそういった関係はまだ無いけど……。
今のところは一緒にいられるだけで満足。でも、"いつか必ず食べてやる" と
は思っている。いや思っていた……。
だって、まさかその日が今日だったとは、さすがのあたしも驚いた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土