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あなたの燃える手で

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御令嬢妄想奇譚

【22】
佐智枝さんが鍵を持って戻ってきました。
佐智枝さんは、鍵の掛かっていない書斎のドアを不思議に思うこともなく、そ
のまま中へ入りました。
「さぁ、どうぞ中へお入り下さい。絢音お嬢様」
佐智枝さんの声が、あたしの背中を押しました。

佐智枝さんの後ろから、今は使っていない父の書斎へと入りました。
しかしドアは、今入ってきた入口のドアしかありません。
「どこから地下へ……?」
「ココでございます、茜お嬢様」
佐智枝さんが腰を屈めて、床のカーペットを捲りました。
「えっ? 何コレ……」
10畳以上はあるこの書斎のカーペットが、約半分ほど捲られました。
するとフローリングの床が現れ、ソコに二つの扉が現れたのです。
一つは大きな扉で2メートル程の大きさがあり、もう一つは小さくその大きさ
は1メートルくらいです。どちらも四方に金属の縁がはめ込まれ、右端には鍵
穴があります。
佐智枝さんはポケットから鍵を出すと、小さな扉の鍵穴に差し込みました。
「鍵って……、この鍵」
「お嬢様、チョット下がっていただけますか?」
「えっ、えぇ」
あたしは2~3歩後ずさりました。
「別に秘密にしていたワケではないのですが……」
佐智枝さんはドアに埋め込み式のハンドルを引っ張り出すと、それを持ってド
アを引き上げたのです。

チョット埃っぽい匂いが、あたしの鼻先をかすめました。
そして暗い地下へと真っ直ぐに延びる階段が、ソコに現れたのです。
階段は人1人分の幅しか無く、途中からは手摺りもあるようでした。でも下が
どうなっているのかは、暗くて見えません。
「降りてみますか? お嬢様」
「えぇ、佐智枝さんと一緒なら」
「勿論ですよ」
佐智枝さんは暗い階段を、1歩1歩ゆっくりと降りていきます。
あたしも下を向いて、最初の1歩を踏み出しました。部屋から差し込む明
かりで、どうにか階段を見るコトが出来ます。途中ギシギシという軋み音が、
チョットだけあたしを臆病にさせました。

先に下に辿り着いた佐智枝さんが、電気を点けてくれました。
白熱灯に照らしだされた地下室は、約30畳程のスペースがあります。
しかしソコはあまりにも何もない、部屋というよりは空間といった印象です。
ココにあるモノといえば、大きなエアコンと机が一つあるだけです。
天井までの高さは約1.5階分の高さがあり、ソコにはレールと一体となった、
鎖を巻いたクレーンが設置されています。レールは天井で輪を描くようにこの
地下室を一周しており、クレーンも当然それに沿って動くモノのようです。

「佐智枝さん、ココは……? 一体ココは何なの……?」
あたしはあまりにも当然すぎる質問を、佐智枝さんに投げかけました。
佐智枝さんの説明を要約するとこうです。

元々この地下室は、ワイン狂だったこの屋敷の前の持ち主が作ったモノだそう
です。当時は数百本のワインの並ぶワインセラーだったらしいですが、何らか
の事情で持ち主がココを手放し、空き家になったこの屋敷をあたしの両親が購
入したというコトです。
書斎の大きなドアは、ワインの樽の大きさに合わせて、天井のクレーンはその
樽を地下へ下ろすためのモノだったのではないかと言われています。
そして使う必要のないこの地下室への入口は、いつしか書斎のカーペットの下
になったまま忘れられた。
そう言われると、確かにワインの香りがするような気がします。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土