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あなたの燃える手で

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御令嬢妄想奇譚

【21】
それはある日、あたしがトイレに行こうと部屋を出たときでした。
佐智枝さんの部屋から、梓先生との会話が聞こえてきたのです。
そしてあたしは聞いてしまったのです。衝撃的なあの言葉を……。

「ねぇ、佐智枝さん。地下室は使えるのかしら?」
「えぇ、大丈夫ですよ。何年も使ってませんけど、掃除はしてあります」
「そう、良かったわ……」
「地下室を使う、何かご予定でも……?」
「えぇ、チョット考えていることがあるの」
「そうですか」

地下室? 地下室とは何でしょう。その言葉があたしの耳から離れません。
この屋敷に越してきて数年経ちますが、あたしは地下室の存在など、1度も聞
いたことはありません。
それに一体何処から地下へ降りるというのでしょう。そんなドアも入口も、あ
たしは見たこともないのです。
そしてその地下室の存在こそが、梓先生があたしのバージンを奪わなかったコ
トへの答えとなったのです。


翌日、あたしは部屋にコーヒーを持って来てくれた佐智枝さんに、地下室につ
いて聞いてみました。
「ねぇ、佐智枝さん。昨日チョット聞いちゃったんだけど」
「はい、何です?」
「この家に地下室なんてあるの?」
「あぁ、あの時の話、聞こえてしまったんですね」
「うん……」
「はい、ありますよ。この家には地下室がございます。もっとも、今は使って
はいませんが」
「本当? 本当にあるのね。案内して、ねぇ、案内してよ」
あたしは冒険小説の主人公になったような気分で言いました。だって今まで知
らなかった地下室の秘密が、今暴かれようとしているのです。
「はいはい、判りました。それでは参りましょう」
佐智枝さんはそんなあたしに優しく微笑むと、階段を下りていきました。

階段を下りた佐智枝さんは、父の書斎へと向かいました。
「えっ? ココ? ココってお父さんの……」
「そうですよ。お父様の書斎です」
思えばあたしは随分この部屋に入っていません。
佐智枝さんは書斎の前で止まると、ドアノブに手を掛けました。
「あっ、鍵を持って参ります」
「鍵?」
「はい」
佐智枝さんは2階へと上がっていきました。

あたしは試しに、書斎のドアノブを回してみました。するとドアはあたしを中
へと招くように、"カチャ" と小さな音を立てて開いたのです。
「あれ? 開いてる? 佐智枝さんは何の鍵を取りに……?」
小さな疑問が浮かぶあたしの前に、ドアが開くと共に室内が見えてきました。
懐かしい父の書斎。全て壁を本で埋め尽くした部屋。
それは机に差し込むカーテン越しの白い光までが、時が止まったように昔のま
までした。
地下室、この部屋から地下室へ。いざとなるとやっぱりドキドキします。
あたしはドアを閉めると、佐智枝さんが来るまで廊下で待っていたのです。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土