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あなたの燃える手で

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御令嬢妄想奇譚

【11】
あたしが屋敷に帰ってきたのは、ちょうど90分後でした。
屋敷までの坂道を上りながら、あたしは2人のコトを考えていました。
しかし玄関を開けたあたしを、2人は何食わぬ顔で出迎えたのです。
やっぱり何もなかったのかしら? あたしは自分の勝手な妄想が外れたコトに
チョッピリ落ち込みながら、自分の部屋に戻りました。

ゴロンとベッドに横になると、あたしは天井を見つめました。
そして思ったのです。
「そうだ、そんなにあたしとキスがしたかったのなら、梓先生と……」
でも梓先生とは昼間しかチャンスがありません。
佐智枝さんの時ように、夜になって部屋に行くワケには行かないのです。
限られた時間と場所を、有効に使うことを考えなければいけないのでした。

でもあたしは、簡単な方法を思いつきました。
それはあたしが散歩で屋敷を留守にするように、あたしの代わりに佐智枝さん
が屋敷を留守にすればいいのです。
あとはその計画を実行に移すだけでした。でもなかなか良い口実が見つかりま
せん。あたしは計画を実行できないまま、日にちだけが経っていきました。

そんなある日、あの日がやってきたのです。
それはあたしが階段を踏み外し、右足首を捻挫してしまったのでした。


翌日、梓先生の授業が始まる頃、あたしは先生に右脚の痛みを訴えたのです。
「大丈夫? 湿布を貼り替えた方がいいかしら」
「そうですね、昨夜張ったままだから、そろそろ……」
梓先生はあたしをベッドに座らせると、自分が座っていた椅子をあたしの前に
置きました。そしてあたしの右脚を持って、その椅子に載せてくれたのです。
右足首には包帯がグルグルと巻いてあります。包帯を巻いただけで、まるで入
院でもしているような大ケガをしたように見えるから不思議です。
湿布は部屋に用意してありましたから、先生はそれを持ってあたしの前にしゃ
がむと、包帯の上から患部に手を置きました。
「まぁ、こんなに腫れて……、痛かったでしょう?」
足首は自分でもビックリするくらい腫れています。それはまるで、足首にソフ
トボールでも入っているかのように見えるのです。
「全然動かないの?」
「はい。これだけ腫れているとチョット……」
「痛みは? ズキズキする?」
「動かしたりしなければ、大丈夫みたいです」
「そう、じゃこれは?」
梓先生は患部を、指だけでトンと叩きました。
なんとなく鈍い痛みが、足首全体に拡がります。
「それくらいなら……、大丈夫です」
「じゃこれは?」
今度は腫れ上がった足首を、軽く握ってきました。しかもあたしの顔色を見な
がら、徐々に力を入れてきます。
「あっ……、チョット痛いです」
「そう、痛いの……。可愛そうね」
でも先生は握った手を離しません。その顔は妖艶で、唇はわずかに微笑み、
爛々と輝く目はあたしを刺すよう見つめています。

その瞬間、あたしはこの世界に魅入られたのです。それはこの世界の、まだほ
んのドアノブを握ったに過ぎませんが、あたしは引きずり込まれるような力強
さを感じたのでした。
そしてそのドアを開ける日は、以外に早くやって来たのです。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土