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あなたの燃える手で

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御令嬢妄想奇譚

【7】
これは現実でしょうか?
あたしが佐智枝さんにこんなコトを言うなんて……。まるでもう1人の自分が
言わせているような気にもなります。
俯くあたしの視界に、佐智枝さんの足が見えました。
首を上げて彼女を見ると、佐智枝さんはもう目の前にいて、あたしに向かって
優しく微笑んでいるのです。
「絢音お嬢様……」
佐智枝さんはあたしの目を見つめ、その目をそらしません。
「えっ……」
あたしはその時になって、少し震えている自分に気が付きました。
まさか、まさか本当に……? さっきまでの大胆な自分は消え、今はまるで夢
から覚めたような、いつものか弱いあたしに戻っています。
「あたしでよろしければ喜んで……」
佐智枝さんの手があたしの肩に乗り、二の腕へと滑り落ちました。そして優し
く二の腕を握ります。
あたしはもう、金縛りにあったように動けません。
「震えてますよ、お嬢様」
彼女とあたしとの距離が縮まり、優しい笑顔があたしの顔に近づいてきます。
「あっ、えっ、あ、あの……」
蚊の鳴くような声は彼女に届きません。
高鳴る胸、小さな呼吸。彼女の視線。そして唇。
あたしの心は、嵐の海に浮かぶ木の葉のように揺れ動きます。そんなあたしの
心をよそに、佐智枝さんの唇が重なりました。

その瞬間、あたしは宙に浮いたような心持ちになりました。
全ての音が、時間が……、この星さえも消えて。あたしは不思議な光に包まれ
て、何処かをフワフワと漂っています。

そう、これがあたしのファーストキスでした。

唇が離れると、佐智枝さんの手があたし背中に回りました。
「絢音お嬢様……」
夢から覚めやらぬあたしを、佐智枝さんが抱きしめました。
そしてもう1度唇が重なります。その時になって、あたしは半ば佐智枝さんに
支えられて立っていたコトに気が付いたのです。
そして柔らかく暖かな舌が、あたし唇を割り開きました。舌はあたしの舌を舐
め、絡みつくように動きます。
今度は、さっきとはまるで違う感覚でした。あたしはこの星のこの場所に立
ち、耳には風が窓をカタカタと鳴らす音が聞こえます。
そしてあたしは大胆にも、もっとこの時間が続けばいいとさえ思ったのです。

窓の外は漆黒の闇。
この時間、こんな所を通る人もいるワケがありません。それがあたしを開放的
にしていきました。
本当はチョット怖い。だって、初めてだから。
でも、佐智枝さんなら……、佐智枝さんなら……。
「佐智枝さん……」
「絢音お嬢様……」
「あたし……、バージンなの……」
「存じ上げておりますよ」
あたしは覚悟を決めて、もう1度目を閉じました。
すると息を止めて待つあたしに、佐智枝さんの唇がまた重なったのです。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土