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あなたの燃える手で

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こちら夢の森探偵社


エマは910号室の鍵穴に鍵を差し込んだ。
ドアを開けると、そこには夏のなごりのような熱気が籠もっている。
「さぁ、入るがいい。ここが我らの城だ」
エマは体でドアを押さえると、左手を中へと差し入れた。
「お邪魔しまぁ~す。うっ、熱っ……」
「引っ越しを済ませてから、1週間ほど来ていないからな」
靴を脱ぐと、エマが先に立って室内へと歩みを進めた。
短い廊下には、バスルームとトイレの他に3つのドアがある。
エマが一番手前のドアを開けた。そこは8畳程の部屋だった。


エリが駅前に来てから約10分。幹線道路から明かりの消えたバスターミナルへ
と入ってくる車があった。車はエリに向かって2回ライトを点滅させた。
しかしドライバーは逆光でよく見えない。
「奈美先生……?」
そのうち窓が開き、片手が伸びるとエリに向かって手招きした。
「エリちゃん」
その声に、エリは小走りに車に駆け寄った。
「先生……」
奈美は窓を全開にすると、白いポロシャツを着た体を乗り出した。
「エリちゃん大丈夫? あれから何もなかった?」
「は、はい、大丈夫です」
「良かったわ、何もなくて……。さっ、乗って。家まで送って上げる」
「はい」
エリは助手席のドアを開けると、バッグを膝に乗せて座った。
「えぇ~っと、どっちに行けばいいのかしら」
エリは商店街の方向を指差した。
「あっちです。夢の森商店街の向こうにある住宅地です」
「あら、良いトコロに住んでるのね」
「住宅地って言っても、その一角にあるアパートなんです。あたし一人暮らし
ですから……」
「あらっ、そうなの。それじゃ行くわよ。シートベルトちゃんと締めてね」
「はいっ」
奈美は左ウインカーを点滅させると、車を幹線道路へと進入させた。


リンダが最初に通された部屋、そこは8畳程の居間になっていた。
カーペットの床に革張りのソファ。そしてガラスのローテーブルがその前に置か
れている。壁には作者の判らない印象派のような絵が掛かっていた。
その壁の向こうは909号室になる。
エマは大げさに両手を広げ、部屋を見回しながら一段低くした声で言った。
「この部屋が何だか判るか、リンダ」
「まぁ、だいたい……」
「ここは依頼人を通す応接室だ。ここで依頼人から話を聞くことになる。いわ
ばこの城の顔といったところか」
エマは両手を広げたまま、その場でクルリと回って見せた。
「出た、”どこでも歌劇団”。ホントに場所を選ばない人だな」
エマは頭を垂れたバレリーナのようなお辞儀をし、片手を隣室へと伸ばした。
「さぁ、隣の部屋へ……」
エマはホテルマンのようにドアを開け、軽く会釈までしてリンダを導いた。

2人は廊下へ出ると隣の部屋に移った。そこは10畳程の広さがある。
部屋にはPCが載った机が2つと本棚があった。本棚には法律や犯罪に関する
本がぎっしりと並んでいる。
机の横にはPCに繋がったプリンター兼FAXが、小振りな台に置かれていた。
「この部屋はいわばこの城の頭脳。まさに中枢だ」
「要するに事務室……、でしょう」
「何を言う。この部屋こそが、多くの迷える子羊たちを救うことになるのだ。因み
に君の机はこっちだ」
大股で室内をグルグルと歩き回り、エマは窓に広がる夜景を見つめた。
「誰です? それ……」
「さぁ、リンダ。最後の部屋に案内しよう」

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土