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あなたの燃える手で

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ちゃんと抱いて


あたし達は暗い砂浜を、何度もつまずきそうになりながら車へと戻った。
海沿いの国道は、まだ海帰りの渋滞が延々と続いている。
あたしはフロントガラスから交通情報見上げた。
「この先渋滞5キロだって」
「お腹空いたね。どっかで夕飯食べていく?」
「うん」
あたしはゆっくり進む車から、レストランの看板を探す。
でも車の中から見るレストランは何処も込んでいて、駐車場も一杯だった。
「何処も込んでるね」
「そうね、一番込んでる時間かも」
「考えるコトはみんな同じかぁ~。はぁ~、お腹空いたなぁ~」
海で食べたラーメンは、もうお腹には跡形もない。
ドリンクホルダーの缶コーヒーも、とっくに空っぽだ。
ガードレールの向こうを、1台の自転車が涼しげに追い抜いていった。

そうして30分くらい走った時、はるか前方にレストランの看板が見えた。
「あっ、レストラン発見!」
「えっ……?」
「ホラッ、あっ、……あれ?」
レストランに見えたそれは、モーテルの看板だった。
来るときと同じ道だけど、あんなのあったけ?

何となくだけど、里美さんがそのモーテルを気にしているのが判った。
車はモーテルの看板まで、あと100メートルくらいの所まで来ている。
「ねぇ、舞ちゃん……」
里美さんの左手が、あたしの太腿の上に置かれた。

もしかして里美さん……、4発目の爆弾?
爆弾には慣れたつもりだったけど、まさか核弾頭とは。
里美隊長の作戦はいつも大胆だ。
でも、あたしは全然OK。里美さんなら。ううん、里美さんじゃなきゃヤダ。
それに、あたしからは誘えない。だって……、だって、そういうコトだ。
その先は言わなくても判るよ、里美さん。
何処までもついて行きます。里美隊長。

「いいよ、里美さん。行こう」
あたしは核弾頭を全身で受け止めた。
里美さんは黙ったまま左のウインカーを出すと、道を曲がった。

車は国道から逸れると、すぐまた右に曲がった。
国道と平行した細い裏道、それはそのままモーテルの裏へと出る道だった。
里美さんは少し走ると車を止めた。
「本当にいいの? 舞ちゃん」
何気なさを装って、里美さんがポツリと呟いた。
「うん」
別にあたしの気持ちは変わらない。
車はゆっくりと走り出し、モーテルへと入っていった。

車を降りると、あたし達はごく自然に手を繋いだ。
少しだけ緊張がほぐれる。でも力を入れているのはあたしの方だ。
そして誰もいない駐車場を歩く。
2人の前で、ガラスの自動ドアが少し軋んで開いた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土