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あなたの燃える手で

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夢の森歌劇団

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吹雪の楽屋に入ると、二人は互いに背中に両手を回して抱き合った。
「ずっとこうしたかったのよ、吹雪……」
「あぁ、僕もだよ。綺羅……」
吹雪が男役の口調で答えると、二人は唇を重ねた。

すぐに吹雪の舌が滑り込み、綺羅の舌がそれを出迎える。2枚の舌は絡み合
いもつれ合い、やがて後ろ髪を引かれるように唇が離れた。
「ねぇ、吹雪。もう一回キスして……」
「ここではダメだよ。誰が来るかわからないし。僕達の関係が世間に知れら
それこそ大変だ。マスコミが面白おかしく書き立てるに決まってる」
「吹雪ったら、もう男役の話し方がすっかり板についてるのね」
「なんだかこっちの方が話やすくてね」
「そうなの。そんな気がしてたわ」
「綺羅。今は我慢して。ホテルに帰ったらいっぱい可愛がってあげるから」
「わかったわ……」
不完全燃焼を露わにした顔で、綺羅は俯いた。
すると話題を変えるように、吹雪が言った。
「ねぇ綺羅、次の作品なんだけど……」
「えぇ、もう? 楽日だっていうのに、もう次の話……?」
「うん、っていうか」
「知ってるわよ。次の作品は超古代が舞台で、天使に身を捧げる女王と、悪
魔に魂を売る祭司の話でしょう。隣国の侵略と戦いな
がら、真の平和と幸福の意味を問う作品だって聞いてるけど……」
「っていうか、作品そのものじゃなくて、配役……」
「配役?」
「うん。女王は君。司祭は僕。でもね、問題は天使と悪魔なんだ」
「それってもう決まってるの? 誰なの?」
「これは噂で聞いただけなんだけどね」
「うん」
「それが、『春風 恋』と『寿々水 雫』らしいんだ」
「えっ? 待って。その二人って、去年入った新人……、でしょう?」
「うん。その新人が、次回の僕達の相手役……、らしいよ」
「ホント?」
「だからまだ噂だってば……」
「噂だとしても、そんなのあり得ないわ……。みんなどれだけ時間とレッス
ンを重ねてきてるの思ってるの? それでも役を貰えずに裏方に回って頑張
っている人が一杯いるっていうのに……。あたし、確かめてみるわ」
「確かめるって、まさか、レイラさん……?」
「そうよ。決まってるじゃない。レイラさんに直接抗議するのよ」
「えっ? 抗議? だってレイラさんは劇団初期の立ち上げメンバーだよ。
そんな大先輩に抗議なんて……」
「じゃ誰にいうのよ。おかしくない? そんな配役。納得できないわ」
「そうかも知れないけどさ。まぁ綺羅、落ち着いて。まったくどっちが男役
かわからないよ」
「だってぇー」

『龍崎レイラ』は、夢の森歌劇団草創期の立ち上げメンバーだ。彼女は出し
物、配役、楽曲など全てに関わり、実質この劇団を掌握している。、
彼女がダメと言えばその出し物はボツになり、役を替えると言えばその場で
役が変わってしまう。
それほどの実力者だった。


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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土