花散る午後
花散る午後
プロローグ
奈津子はシャワーを止めるとバスルームのドアを開けた。
空調の効いた部屋に白い霧が広がり消えていく。濡れた体のまま白いバスローブを羽織ると、髪を拭きながらバスルームを出た。
ライトブラウンの壁に、スタンドの間接照明が万華鏡のような陰を作っている。部屋にはシングルベッドが1つ置かれ、皺1つないシーツから大きな枕が顔を覗かせている。ベッドのサイドテーブルには、旅行パンフレットとルームキーがあり、その手前の床には旅行カバンが無造作に置かれている。
奈津子は生乾きの髪に手をやりながら、藍色に光る窓辺に歩み寄ると、30階からの夜景を見下ろした。眼下には小雪の舞う夜景の海が広がっている。
「あの街に戻ったら、何か新しいことを始めようかしら……」
夜景の上に映る自分の顔を見つめ、奈津子は小さな溜息を1つ吐いた。
1
2年前に夫を亡くし、未亡人となった奈津子は年末の休みを使い、この北国のホテルに宿泊していた。去年もこのホテルの同じ部屋で新年を迎えた。
子供がいないのが幸いし、勝手気ままな一人旅が出来る奈津子だったが、三十路を迎えた女の一抹の寂しさは拭いきれなかった。
奈津子はバスローブのままシーツの上に体を投げ出した。目をつぶると、旅の疲れがベッドに吸い込まれていくように体の力が抜けていく。
大きく深呼吸をすると、柔らかなバスローブが胸の紅い実を優しく擦った。
誰もいない静かなこの部屋に、奈津子の吐息だけが小さく繰り返された。
深呼吸をする度に、意識が胸の紅い実に集中していく。
奈津子の中に熱い小さな塊が生まれた。それは少しずつ大きくなる淫らな妄想の種だった。
バスローブの中に片手を入れ、乳房をゆっくりと揉んでみる。指の間に紅い実を挟むと、それはコリコリと硬くなっていった。バスローブの帯を解き胸をはだけると、両手で乳房を揉み始めた。そして二つの紅い実を両手の指先で挟んだ時、淫らな種が妄想という名の芽を出した。
奈津子は暗闇の中で、一糸纏わぬ姿で大きなベッドに横たえられていた。
大きく引き延ばされた四肢は縛られ動くことは出来ない。特に両脚は大きく拡げられている。
突然強いライトが奈津子の向かって照らされた。その眩しさの向こう側に、シルエットになった4~5人の人影が見える。そのシルエットはくっきりと女の体の曲線を映し出していた。
奈津子の右手が胸から腹を滑り柔らかな茂みに掛かった。手は更に進み、指先がすでに濡れたバラの花びらに触れると、感電したように体が波打った。
「あぁ~、あっ、あぁぁん」
指先がバラの花びらを開き、その中に滑り込んでいった。
数人の女たちは目だけを隠す仮面を付けていた。その仮面は蝶の羽を模したもので、一人一人その模様や色は違っている。仮面の女たちは奈津子を取り囲むように立つと、その体を舐めるように見つめた。強いライトに照らされた体は陰一つ出来ていない。
(いやっ、見ないで。見ないで。恥ずかしい。見ないでぇ)
しかし女たちは黙って奈津子の体を見下ろしている。一人の女が奈津子の股間に手を伸ばすと、バラの花びらを大きく拡げた。
(いやぁ~、やめてぇ~)
その拡げられた花びらを他の女たちが覗き込んでいる。真っ赤に塗られた唇がつり上がり、仮面の下の目は冷静にソコを凝視している。
奈津子の指はバラの蜜壺の中で、淫靡な音を立て始めていた。