ロザリオは赤く輝く
† 4
1週間後の金曜日の夜。この日は北風が強く、星もない寂しい夜でした。
わたしはジーンズに、茶系のタートルネックのセーターを合わせ、その上にレ
ンガ色のダッフルコートを着て、約束通りにこの教会にやってきました。
予定より遅い時刻になりましたが、礼拝堂の明かりは点いていました。
扉を開け正面の祭壇まで進むと、ちょうど『祈りの部屋』の前に、紫苑様が
立っていました。この間と同じシスターの服装でした。
「紫苑様。遅くなって申し訳ありません」
「いいのですよ。これ位の時間の方が。この辺を訪れる人もいませんから。
さぁ、こちらです。わたしの後について来て下さい」
「はい」
わたしはよく意味が分かりませんでしたが、紫苑様に従い歩いていきました。
紫苑様は祭壇の前を『祈りの部屋』とは反対の方向、礼拝堂の右側へと歩いて
いきます。するとそこには小さな扉があり、紫苑様はその扉を開けて、表へ出
たのです。
「別館にご案内します。つまずかないように、足元に注意して下さいね」
そこから紫苑様は、教会の裏へと向かって歩いていきました。
月も星もない夜でしたが、地面には敷石があり紫苑様はそれをたどって歩いて
いきます。暗くて最初分からなかったのですが、教会の裏は池になっていまし
た。まだこの公園のボートに乗ったことのないわたしは、池がここまであることを初めて知りました。
2分ほど歩いたでしょうか。紫苑様の肩越しに小さな建物が見えました。
それは50メートルほど先の遊歩道の街灯に照らされ、真っ黒なシルエットと
してわたしの目に飛び込んできました。
紫苑様は、その建物に向かって歩いているようでした。
ここから見る限り、その建物は平屋で、学校の教室を半分にした位の大きさで
した。三角の屋根に十字架はなく、窓も小さな物が高い位置に1つあるだけで、中を覗くことは出来きません。別館と言うにはあまりに小さく、わたしには小屋、といった印象でした。
紫苑様はその小屋の鍵を開け、中に入ると明かりを点けました。
温かそうな白熱灯の明かりが、小屋の中を煌々と照らし出しました。
「どうぞ、お入り下さい」
「はい、失礼します」
わたしは紫苑様に続いて小屋の中に入りました。
そこはちょうど小さな礼拝堂を思わせるような作りでした。一番奥に人の背丈
ほどの十字架を置いた祭壇があり、祭壇の両側には、3本の蝋燭が灯せる燭台が、1本ずつ置かれていす。
祭壇に向かって左側にはバスルームへのドアがあり、そのドアの横から聖書の
並んだ本棚があり、そして右側の壁は、壁そのものが鏡になっていました。
ただ1つ、礼拝堂と大きく違うことは部屋の中央に置かれたベッドでした。
それはベッドというにはあまりに硬そうな、そう、それはレザー張りの手術台
と言った方が良いような物でした。
結局、窓は外から見たあの小さな物が1つだけでした。
「それでは、服を脱いで下さい」
「えっ、服を……ですか」
「そうですよ」
紫苑様は当然のように言い放ちました。
「はっ、はい」
まだ暖房が効いていないこの部屋で、服を脱ぐのは辛いことでしたが、わたし
は紫苑様の言いつけ通りに、服を脱ぎ始めました。
1週間後の金曜日の夜。この日は北風が強く、星もない寂しい夜でした。
わたしはジーンズに、茶系のタートルネックのセーターを合わせ、その上にレ
ンガ色のダッフルコートを着て、約束通りにこの教会にやってきました。
予定より遅い時刻になりましたが、礼拝堂の明かりは点いていました。
扉を開け正面の祭壇まで進むと、ちょうど『祈りの部屋』の前に、紫苑様が
立っていました。この間と同じシスターの服装でした。
「紫苑様。遅くなって申し訳ありません」
「いいのですよ。これ位の時間の方が。この辺を訪れる人もいませんから。
さぁ、こちらです。わたしの後について来て下さい」
「はい」
わたしはよく意味が分かりませんでしたが、紫苑様に従い歩いていきました。
紫苑様は祭壇の前を『祈りの部屋』とは反対の方向、礼拝堂の右側へと歩いて
いきます。するとそこには小さな扉があり、紫苑様はその扉を開けて、表へ出
たのです。
「別館にご案内します。つまずかないように、足元に注意して下さいね」
そこから紫苑様は、教会の裏へと向かって歩いていきました。
月も星もない夜でしたが、地面には敷石があり紫苑様はそれをたどって歩いて
いきます。暗くて最初分からなかったのですが、教会の裏は池になっていまし
た。まだこの公園のボートに乗ったことのないわたしは、池がここまであることを初めて知りました。
2分ほど歩いたでしょうか。紫苑様の肩越しに小さな建物が見えました。
それは50メートルほど先の遊歩道の街灯に照らされ、真っ黒なシルエットと
してわたしの目に飛び込んできました。
紫苑様は、その建物に向かって歩いているようでした。
ここから見る限り、その建物は平屋で、学校の教室を半分にした位の大きさで
した。三角の屋根に十字架はなく、窓も小さな物が高い位置に1つあるだけで、中を覗くことは出来きません。別館と言うにはあまりに小さく、わたしには小屋、といった印象でした。
紫苑様はその小屋の鍵を開け、中に入ると明かりを点けました。
温かそうな白熱灯の明かりが、小屋の中を煌々と照らし出しました。
「どうぞ、お入り下さい」
「はい、失礼します」
わたしは紫苑様に続いて小屋の中に入りました。
そこはちょうど小さな礼拝堂を思わせるような作りでした。一番奥に人の背丈
ほどの十字架を置いた祭壇があり、祭壇の両側には、3本の蝋燭が灯せる燭台が、1本ずつ置かれていす。
祭壇に向かって左側にはバスルームへのドアがあり、そのドアの横から聖書の
並んだ本棚があり、そして右側の壁は、壁そのものが鏡になっていました。
ただ1つ、礼拝堂と大きく違うことは部屋の中央に置かれたベッドでした。
それはベッドというにはあまりに硬そうな、そう、それはレザー張りの手術台
と言った方が良いような物でした。
結局、窓は外から見たあの小さな物が1つだけでした。
「それでは、服を脱いで下さい」
「えっ、服を……ですか」
「そうですよ」
紫苑様は当然のように言い放ちました。
「はっ、はい」
まだ暖房が効いていないこの部屋で、服を脱ぐのは辛いことでしたが、わたし
は紫苑様の言いつけ通りに、服を脱ぎ始めました。