ロザリオは赤く輝く
† 3
わたしは『祈りの部屋』という小さな空間の中で、あの日の事、親友の結婚祝
いの飲み会の日にあった事を告白しました。
酔っていたので細かいことは分からない事。幸い避妊はされていた事。
それでもわたしの体は犯され、あの男に穢された事。それらの事をわたしは全
て包み隠さず紫苑様に告白したのです。
「そうですか。そんなことが……」
「はい」
「それで自分の身が穢れていると……思っているのですね?」
「そうです。事実わたしは穢れているのです」
聞こえてくる声にすがる思いで答えました。
「紫苑様、どうかわたしをお救い下さい」
「今日は日曜日ですね。毎週金曜日は時間があります。また金曜日に来ると良
いでしょう」
「でも仕事が、昼間は仕事で無理かと……」
「夜でも構いませんよ。いえ、むしろ夜の方が良いでしょう。落ち着いて話も
聞けますし、ここら辺は夜になると静かですから」
「そうですか」
「もしあなたがよければ、その身が穢れていると思うならば、清めることも出
来ますよ」
「お清め出来るのですか?」
その言葉がどれだけわたしを救ったか。まさに主がわたしの前に現れたよう
な、そんな気持ちになったのです。
「もちろんです。あなたが望むのであれば、聖水を使ってその身を清める事は
可能です。あくまであなたが望むのであればですが……」
「是非、是非おねがいします。紫苑様。聖水でこの身をお清めください」
「ふふっ、紫苑でいいのですよ。わたくしは神ではありません」
「いいえ。紫苑様と呼ばせて下さい。この穢れた身を清めてください」
「わかりました。今夜は予定がありますので、来週の金曜日にお待ちしていま
す。時間は何時でも構いませんよ」
「参ります。来週の金曜日の夜。必ずここに参ります。どうかこの穢れた身を
お清め下さい」
「……」
しばらくの沈黙のあと、わたしの後で『祈りの部屋』の扉が開きました。
振り返るとそこに紫苑様が立っていたのです。
わたしは振り返り、胸の前で両手を組むと、片膝を付いて紫苑様に頭を垂れま
した。
紫苑様は胸のロザリオを左手で持つと、わたしに歩み寄り身を屈め、わたしの
顎の下に右手を当てました。そしてわたしの顔を上に向かせました。するとそこには紫苑様のお顔がすぐ近くにあり、紫苑様はそのお顔を更に近づけ、わたしにそっと口づけをしたのです。
紫苑様の口づけに、わたしの体中の血が沸騰したように熱くなりました。
上気したわたしの顔を見て、紫苑様は優しく微笑んでいました。
赤く卑猥な唇を、三日月のように歪ませながら。
わたしは『祈りの部屋』という小さな空間の中で、あの日の事、親友の結婚祝
いの飲み会の日にあった事を告白しました。
酔っていたので細かいことは分からない事。幸い避妊はされていた事。
それでもわたしの体は犯され、あの男に穢された事。それらの事をわたしは全
て包み隠さず紫苑様に告白したのです。
「そうですか。そんなことが……」
「はい」
「それで自分の身が穢れていると……思っているのですね?」
「そうです。事実わたしは穢れているのです」
聞こえてくる声にすがる思いで答えました。
「紫苑様、どうかわたしをお救い下さい」
「今日は日曜日ですね。毎週金曜日は時間があります。また金曜日に来ると良
いでしょう」
「でも仕事が、昼間は仕事で無理かと……」
「夜でも構いませんよ。いえ、むしろ夜の方が良いでしょう。落ち着いて話も
聞けますし、ここら辺は夜になると静かですから」
「そうですか」
「もしあなたがよければ、その身が穢れていると思うならば、清めることも出
来ますよ」
「お清め出来るのですか?」
その言葉がどれだけわたしを救ったか。まさに主がわたしの前に現れたよう
な、そんな気持ちになったのです。
「もちろんです。あなたが望むのであれば、聖水を使ってその身を清める事は
可能です。あくまであなたが望むのであればですが……」
「是非、是非おねがいします。紫苑様。聖水でこの身をお清めください」
「ふふっ、紫苑でいいのですよ。わたくしは神ではありません」
「いいえ。紫苑様と呼ばせて下さい。この穢れた身を清めてください」
「わかりました。今夜は予定がありますので、来週の金曜日にお待ちしていま
す。時間は何時でも構いませんよ」
「参ります。来週の金曜日の夜。必ずここに参ります。どうかこの穢れた身を
お清め下さい」
「……」
しばらくの沈黙のあと、わたしの後で『祈りの部屋』の扉が開きました。
振り返るとそこに紫苑様が立っていたのです。
わたしは振り返り、胸の前で両手を組むと、片膝を付いて紫苑様に頭を垂れま
した。
紫苑様は胸のロザリオを左手で持つと、わたしに歩み寄り身を屈め、わたしの
顎の下に右手を当てました。そしてわたしの顔を上に向かせました。するとそこには紫苑様のお顔がすぐ近くにあり、紫苑様はそのお顔を更に近づけ、わたしにそっと口づけをしたのです。
紫苑様の口づけに、わたしの体中の血が沸騰したように熱くなりました。
上気したわたしの顔を見て、紫苑様は優しく微笑んでいました。
赤く卑猥な唇を、三日月のように歪ませながら。