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あなたの燃える手で

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ロザリオは赤く輝く

† 1
わたしの隣には男性上司が寝息を立てていました。
わたしはシャワーを浴び、上司が寝ている間に部屋を出ました。
それからわたしが会社に行くことはありませんでした。
1ヵ月後、わたしはこの『夢の森』に越してきたのです。

穢れた心と体で、今わたしはこの教会の門の前に立っています。
門の両側に立つ太い門柱には、『夢の森聖教会』と鉄の板に浮き彫りになった
字が読めました。
「何か御用ですか?」
ふいに後ろから声をかけられ、私は息をのんで振り返りました。するとそこに
は、グレーのワンピースに同色の頭巾をかぶった、典型的なシスターの服装に
身を包んだ女性が立っていたのです。
彼女は、胸に銀のロザリオを下げていました。切れ長の目に鼻筋がとおり、
赤い唇が妙に卑猥に見えたのを憶えています。
「あっ、いえっ、別に」
「よかったら中へどうぞ……」
彼女は微笑みながらそう言うと、教会の門を音もなく押し開きました。
わたしは彼女の促すままに教会の門を通っていました。
その人の包み込むような優しい微笑みは、わたしの傷ついた心と体を癒して
いくようでした。
2人の短い陰が、茶色くなってしまった芝の上を移動していきます。私達は敷石をたどりながら、礼拝堂へと歩いていきました。
その時、歩きながら彼女が言いました。
「わたしは紫苑(シオン)と言います」
「水森春奈と申します」
わたしより頭ひとつ高い彼女の後を歩いている時、心に安堵の気持ちが広がっていきました。それは彼女に、紫苑様に頼れる何かを感じていたのかもしれません。
わたしたちは敷石を30メートルほど歩き、礼拝堂の扉の前に建ちました。
ひと際背の高い扉でした。紫苑様はポケットから鍵束を取り出すと、両開きの
木の扉の鍵を開け、その扉を押しました。扉は微かな軋み音を立てて開き、
わたしたちを中へ招き入れました。
アイボリーの色調に統一された礼拝堂に入ると、まず正面にある祭壇の上の大
きな白い十字架が目に入りました。そして歩いていくほどに、通路の両側に並
ぶ長椅子がよく磨かれていることに気が付きます。目を壁のステンドグラスに
向けると、それは天井近くまであり、表の陽光に輝いていました。

この土地の雰囲気と匂い。そしてこの教会までの道程。何もかも初めての筈の
この街に、わたしはどこか懐かしさを憶えていました。

Comments 2

マロ  

傷付いた主人公が辿り着いた教会で、
一体何が起こるのか・・・。
楽しみです。

2007/11/19 (Mon) 21:56 | EDIT | REPLY |   
蛍月  
マロさんコメントありがとうございます

紫苑と春奈の距離は少しずつ縮まってきます。
もう少し待ってくださいね。
(*^_^*)

なにやらインフルエンザが流行っているようですよ。
自分の回りには感染した人はいませんが、
気をつけて下さいね。  

2007/11/20 (Tue) 19:26 | EDIT | REPLY |   

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土