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あなたの燃える手で

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春を画く


先生こと『十五代目 千手無空』は、あと数年で還暦を迎えます。
でも見た目は若く、必ずと言っていいほど十歳は下に見られます。つまり見
た目は四十代です。
全体に細身で、顔立ちはキリッとして。特にその目は狐を思わせ、いつか金
色に光るのではないかと思うくらいです。胸も小さく、どちらかと言えば貧
乳です。腰もお尻も、女らしい線とは言い難いかもしれません。
ただ先生の長い指が、あたしには堪らなく卑猥に見えるのです。
例えは悪いですが、あの枯れ枝のような長い指が、あたしのアソコに入って
きて中を……、なんて想像するだけで、もう堪りません。

あたしは先生に歩み寄り、イーゼルに置かれた二枚の春画を見ました。
「こっちが初代の描いたモノ。そしてこっちがあたしの描いた模写だ。この
二枚を比べて、どう思う?」
「どう思うって……、言われましてもぉ~……」
あたしはもう一度、まじまじとその絵を見つめました。

シミの広がる床に倒れた女は、両手を後ろで縛られています。床に広がる髪
の横には、長い縄が山になっており、彼女が今まで吊られていたコトが想像
できます。全身には白い蝋が無数に垂らされ、股間にはまだ張り型が挿入さ
れたままです。ただ腰の辺りに置かれた木桶、これがなんなのか、あたしに
は分かりませんでした。

でも、さすがに初代の書かれた絵は、貫禄というか、絵の持つオーラに飲み
込まれてしまいそうな、そんな迫力があります。
それに対し先生の描く絵は、徹底的にリアリズムを追求したものです。
一枚の紙に描かれた女はとても肉感的で、体温が伝わりそうな肉はどこまで
も柔らかく、触れれば濡れそうな汗、吹けば揺れそうなほつれ毛。そして力
なく開いた口が発する喘ぎ声は、誰の耳にも届くでしょう。
筆で描いたとは思えない、まるで見る人の妄想をこの世に召喚したような、
そんな絵なのでした。

「あたしには、先生が初代に負けているとは思えません。初代が天才ならば
先生も天才です」
「そうかい? ありがとうねぇ。でもあたしには、この二枚の絵は全然別物
なんだよ」
「別物……? ですか?」 
「そうさ。初代の絵は、見ている者をこの絵の舞台に連れて行く。まさにこ
の場所に、この部屋、この女の前に連れて行くんだよ」
「はぁ……」
「でもあたしの絵は違う。どこへも連れて行ってはくれない。見ている者は
あくまでその場所でこの絵を見ているだけ、鑑賞しているだけなのさ」
「うぅ~ん、そうでしょうか。あたしにはどっちも素晴らしいと……」
「やっぱり、お前はまだまだ目が養われていないようだねぇ」
「はぁ……、すみません」
「謝るコトはないさ。別に悪いコトじゃないんだ。しょうがないコトさ」
「はぁ……」
「でもねっ、あたしは越えたいんだよ。初代を超えたい」
「先生……」
そうです。先生のその気持ちは分かります。あたしだって、いつかは先生を
超えたいと思っています。そしてそれが弟子の務めというモノです。
でも問題は先生の次の一言でした。

「それでだ鏡空。一つモデルになってくれないかねぇ」
先生は狐のような目を輝かせながら、そう言ったのです。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土