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あなたの燃える手で

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ミセスNに伝言

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ここ最近、奈々が店に姿を現さなくなった。
ソレと同時に菜月も……。
しかしそんなある日、奈々と菜月が二人で店を訪れた。
仲良く微笑み合う二人を見て、ママは二人が関係を持ったことを見抜いた。

やっぱり、あたしより菜月さんなのね、奈々。
そんなコトだと思った。あなたが初めて会った彼女のコトを気にし始めた時
から……。

「ママぁ、水割りちょーだい」
「あたしもぉ~」
すでに酔っている二人は互いにもたれかかり、そんなママの想いに気が付く
気配もない。

でもいいの。元々あたしの片想いみたいなもんだったし。
だから別に、あの人にあなたを取られたとも思わない。
でも目の前でイチャつかれるのは、チョットね……。

ママは手早く水割りを作ると二人の前に置いた。
「はぁ~い、水割りねぇ~」
「ねぇ、コレ、チョット薄くなぁい?」
「うん、薄い薄い」
「あらぁ、いつもと同じよぉ」
「ホントぉ?」
二人は体を斜めにしたまま、水平にかざしたグラスを下から覗き込む。
「ホントよぉ」
「うん、わかった。じゃあママを信じよう……」
「あたしも信じるぅ……」

呂律の回らなくなってきた二人は、それから一時間程で席を立った。
「ママぁ~、そろそろ帰るぅ~」
フラつく足取りで、先に店を出たのは菜月だった。その後に続く菜々をを、
ママは呼び止めた。
「奈々……」
「ん?」
「菜月さんのコト……、もしかして?」
「あぁ、ただの友達よ。と・も・だ・ち。なぁに……? ママ。もしかして
妬いてるぅ」
「そんなコトないけど……。ねぇ、奈々、もしもあの人がイイならそう言っ
て。あたしは黙って身を引くから……。ホントよ」
「なぁ~な、早くぅ」
表にいた菜月が、ドアから首だけを覗かせた。
「今いく。タクシー捕まえといて」
「OK~」
菜月が消えると、奈々はママに向き直った。
「あらあら、タクシーで何処行く気? もしかしてイイ所だったりして?」
ママは平成を装って聞いた。
「ママ。もしかしたらあたし、菜月さんのコト……、好きかも……。でもわ
からないの。だって、ママのことだって好きだから……」
「奈々……」
「だからもう少し時間を頂戴。ねっ?」
「わかったわ。あなたがどっちを選ぶかわからない。でももし、もしも、あ
たしを選んでくれたなら、その時はまたこの店に来て」
「えっ……?」
「そして菜月さんを選ぶなら、もうココには来ないで……」
「う、うん……」

ママからの切ない伝言を受け取ると、気まずい沈黙を断ち切るように、重厚
な扉が静かに閉まった。


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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土