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あなたの燃える手で

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ミセスNに伝言


奈々は先客と二つ席を開けて座ると、彼女の前の水割りを見た。
「ママ、あたしも水割り」
そう言って先客を見た。その途端、奈々は先客の視線に絡め取られていた。

「あらあらっ、なぁ~に? 二人とも見つめ合っちゃって……」
「えっ、そんなっ、あたしは……」
「そうよ、なに言ってるのよママ。ママだって見てるクセにぃ」
「あらっ、あたしは別にからかう気はないのよ。ただここにいる三人が三人
ともって……、チョット珍しいじゃない?」
「三人ともって、なぁに? どういう意味? ママ」
「あらっ、わからないの、奈々」
そう言ってママは、意味深な眼差しで奈々の隣の客を見た。
「じゃぁ、こちらの方も? ママさん」
「えぇ、そうなんですよ。あたしの口から言うのも何々ですけどね」
「えっ? って言うコトは、このお客さん……、も?」
「だからそうなの。三人が三人ともなのよ」
「へぇ~。いくらこういう店だからって……、ねぇ~」
奈々は一人納得したような顔でママを見た。
「悪かったわね、こういう店で……。で、あなたは? 彼女、いるの?」
「いません」
「あらっ、そうなの……。こんなにお綺麗なのに。もったいない」
「そんなっ……。あたし、本当の恋人を探しているんです」
「本当の恋人?」
「えぇ。一生一緒にいられるような、心から信頼しあえるような……」
「それって、誰でもそう思ってるんじゃないです?」
「はい。でも、男と女とは違って……、出会い自体が少ないですし、確率と
言いますか、やっぱりこの世界じゃ難しいのかなって……」
「でも今の世の中、出会いの方法なんていくらでありそうですけど」
「そういうのじゃなっくて、もっと運命的っていうか、 "その日その時、そ
の場所に行かなかったら出会えなかった" みたいな、と言いますか」
「あぁ、なんか昔、そんな歌ありましたよね」
「そうねぇ、そういえばあったわねぇ。あらっ、ごめんなさい」
「もしかして、お二人はぁ……」
「えっ、まぁ、ねぇママ。あたし達ってぇ……」
「そうねぇ、あたし達ってぇ……」
「いいんです、別に……。随分息が合ってるなぁって思ったものですから」
「あらっ、そう?」
「もしかして、ママがさっき言ってた人って……」
「えぇ、まぁねぇ、そんな感じなんだけどね」
「やっぱり……」
「なぁに? さっき言ってた人って……」
「いいのよ。なんでもない。悪い話じゃないから安心して……」
「もう、今度話てもらうからね、ママ」
「はいはい」

それから数十分後、彼女は静かに席を立った。
「あらっ、もうお帰り……?」
「はい」
「いい恋人が出来るように、祈ってるわ」
「ありがとうございます」
「あぁ、そうそう、お名前伺っても?」
「はい。菜月といいます」
「是非またいらしてくださいね……。お待ちしてます」
彼女は微笑みと共に一礼すると、店を出ていった。

「なぁ~んかタイプかも……」
閉じたドアを見つめながら、奈々がポツリと呟いた。


★彡☆彡
姉妹ブログ『Midnight Mom』は凍結しました。

作品は読めますが、これ以上の更新はありません。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土