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あなたの燃える手で

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ミセスNに伝言


「いらっしゃいませぇ」
都会の片隅にひっそりと佇むバー『蒼い蟷螂』。
その一見を許さぬ重厚な扉を一人の女が開けた。
普段からの着用しているのか、着ているグレーのスーツはとても熟れ(こな
れ)感があり、スッと伸びた背筋やその歩き方はデキる女を感じさせる。
全体的に漂うその雰囲気から、彼女の仕事は "お堅い仕事" を連想させた。
「えぇっと、水割りをください」
そう言って彼女は、八席あるカウンターの一番奥に腰掛けた。

「はい、どうぞ……、水割り」
蒼ママは手早く水割りを作ると、彼女の前に置いた。
「そのスーツ、とってもお似合いね」
「えぇ? あぁ、ありがとうございます」
突然話しかけられ、彼女はチョット戸惑ったように答えた。
「はい、コレ」
そう言ってママは、小皿に一掴みのナッツを乗せて出した。
「えっ?」
「いいのよ。今夜最初のお客さんだから‥…、あたしからのサービス」
「あぁ、なんかすみません」

会釈をする彼女と目が合った。さっきから何度か目が合っているが、この絡
み付くような視線……、彼女はビアンだ。間違いない。
長年鍛えてきた "選別眼" というか、皮膚感覚というか、なにかこう直感的に
感じるのだ。見た目がどうこうと言うよりも、その人間が放つオーラのよう
なものを察知してしまうのだ。
でもそれは、自分のことも察知されている可能性も含んでいる。

「ママさん?」
「はい、ママをしております。葵です。ママでも葵ママでも、なんでも好き
なようにお呼びいただければ……」
「それじゃ、葵ママ……、かしら」
「えぇ、結構ですよ……」
「葵ママは、もしかしてあたしと同族かしら……」
「まぁ、唐突に……。でもやっぱりね。気づかれたかもって、思いました」
「それじゃ、やっぱり?」
「はい。お察しの通りです」
「そうなんだ。彼女はいるんですか?」
「えぇ、まぁ、一応パートーナーは。ただ彼女と言えるかどうか、チョット
微妙ですけど……」
「どうして……、ですか?」
「いつもここで会うだけで……。それに向こうあたしをがどう思ってるか、
分かりませんしね」
「えっ……?」
「あたしは独り身なんで、 "いつでもなんでも来い" なんですけどね。向こう
は家庭もあるし、あたしみたいに単純にはいかないでしょうし」
「はぁ、なるほど……」
「まぁ、アチラが立てばコチラが立たずと言いますか」
「うまくいかないもんですね。世の中」
「ホントに。つくづくそう思いますよ」
その時、ドアが空いて奈々が入ってきた。
「あらっ、今日は早いのね、奈々」
「うん、仕事が捗って。出先から直帰」
「ふぅん。そうなの……」

奈々はカウンターのほぼ真ん中。先客と二つ席を開けて座った。
そして先客の水割りをチラリと見た。
「あたしも、水割り」
そう言って先客を見た。
その途端、奈々は先客の視線に絡め取られていた。


★彡☆彡
姉妹ブログ『Midnight Mom』は凍結しました。
作品は読めますが、これ以上の更新はありません。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土