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あなたの燃える手で

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桃色7Days

22
ー4月9日(金)曇りー

あたしは今日の放課後、川本亜紀と会った。
場所はそれこそ音楽室。
あたしたちはモーツァルトの絵の前で、チョット気まずい雰囲気で向かい合
っていた。そりゃそうだ、あたしはラブレターを貰っといて彼女をすっぽか
し、亜紀ちゃんはすっぽかされたんだから。
そんな雰囲気の中、先に口を開いたのはあたしだった。

「ごめんね、ホントに……。音楽室と図書室を間違えるなんて、自分でもど
うかしてると思ってる」
「そんなっ、いいんです、あたしなんて……、いいんです」
「そんなコトないよ。別に亜紀ちゃんのコト嫌いじゃないよ。むしろ可愛い
って思ってる」
「本当、ですか?」
「ホントだよぉ。全然ホント。ただ……、そのう……」
「ただ?」
「 "付き合う" っていうはさぁ……。あたし、付き合ってる人が‥…」
「柚香さん……、ですよね……」
「うん。知ってたの?」
「知ってたっていうか、もしかしたらって、思ってました」
「そうなんだ……。あたし、好きなんだよね、柚香のコト……。だから亜紀
ちゃんとは……、ごめんね」
「いいです。 こうなる予感はしてましたから。大丈夫です」
「う、うん。なんか、すっぽかした上に断るなんて、最低だよね、あたし」
「そんなコトないです。そんなコトないですよ。こうして来ていただいて正
直に本当のこと言っていただいて、もうそれだけであたしは……」
「なんか、ホントにごめんね……」
「そんなっ、謝らないでください。ホントにいいんですから。あたしの方こ
そ、今日は来ていただいて、ありがとうございました」
そう言ってペコリと頭を下げると、亜紀ちゃんは足早に音楽室を後にした。

一人残されたあたしは何気に窓の外を見た。曇り空は灰色感を増し、いつも
のこの時間よりもずっと暗い。家に帰るまでに降り出すかもしれない。
そんなコトを思っていると、後ろから声をかけられた。
「あ~すか」
それは聞き覚えのある、そして間違えようのない声だった。
「あれっ? 柚香、まだいたの?」
「うん。なんとなく……」
「今の話、聞いてた?」
「ううん、聞いてないよ。だって今来たんだもん」
そfれが嘘でもホントでも構わない。だって聞かれて恥ずかしい話なんてして
ないし……。
ふいに "正直に本当のこと言っていただいて" って言う、亜紀ちゃんの言葉を
思い出す。そう、あたしは正直に言った。あの言葉に嘘はない。だから、聞
かれたとしても構わない。恥ずかしくもない。
「明日香、早く帰ろ。今にも振り出しそうだよ……」
「うん。あたしもそうおもってたトコ」
「傘ある?」
「ない」
「えぇ、あたしもなぁ~い」
「それじゃ余計急がなきゃ……」
「そうだね」
あたしたちは早足で下駄箱に向かった。
校内にいるのはあたしたちが最後なのだろう。下駄箱には綺麗に上履きだけ
が並んでいる。靴が入っているのはあたしと柚香の二つだけだ。
"チラッ" と亜紀ちゃんの下駄箱が目に入った。彼女のところにも、もう上
履きが入っている。

「明日香早く、帰るよっ……」
先に靴を履いた柚香は、もう外へ出そうだ。
「うん。あっ、チョット待ってよぉ、柚香ぁ」
鉛のような空の下、あたしは小走りで柚香に追いついた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土