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あなたの燃える手で

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バビロンリング



「教会にこんなところあったんだ……?」
ここに教会があることは知っているが、中に入ることは滅多にない。だからだ
ろうか。奥にこんな小屋のような建物があることを、永遠は知らなかった。
中に入るとそこは10畳ほどの広さで、占いのためのテーブルと、向かい合って
置かれた椅子が二つしかない。

「さっ、そこへどうぞ」
永遠が言われるままに椅子に座ると、占い師ももう一つの椅子に座った。
「それで、何を占って欲しいの?」
そう言いながら彼女は、どこからかタロットカードを取り出した。
「そうだなぁ……」
「ふふふっ」
占い師はタロットカードを両手できりながら永遠の答えを待っている。
「やっぱり恋愛運とぉ、仕事運かなぁ?」

「恋愛運と仕事運ね。わかったわ。それじゃ恋愛運から……」
「はい」
「今、付き合っている人はいるの?」
カードは彼女の手の中で、グルグルときられていく。
「いえ、付き合っている人は、いません」
「それじゃ好きな人は」
「好きな人はいます」
「あらっ、片思い?」
「はぁ、まぁ、そんな感じです」
「そんな感じって……?」
「あのう、女の人なんです」
「その相手が?」
「はい……」
「あらっ、それって……」
カードを切る手が止まった。
「えぇ、そうなんです。私、女の人しか……」
「愛せない……、のね」
「はい」
「そう、それでその人は、そういう……」
「いえ、その人は全然その気はない人で……、だから多分って、諦めてはいる
んですけど。」
「そうなの、それは辛いわねぇ」
そしてまた、カードが切る手が動き始めた。
「でも友達ではあるんです。あたしが勝手に好きなだけで。だから一緒に食事
をしたり、遊びにも行ったりできるんです」
「そう」
「だから、それでいいかなって……。でもそう思う一方で、やっぱり出来れば
結ばれたいみたいな、せめてキスだけでもっていうか」
「わかったわ」
「あんまり高望みすると、バチが当たりますかね。相手の気持ちもあるし」
「そうね、それも大切ね。わかったわ、その人と今後どうなるか? ってコト
でいいのね」
「はい、お願いします」
占い師はカートをテーブルに置くと、今度はテーブルの上でグルグルと混ぜ始
めた。カードは向きを変え、互いの隙に入り込み、上になり下になり、複雑に
絡み合うように混ざっていく。
永遠は無言でそんなカードを見つめていた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土