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あなたの燃える手で

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桃色流星群

29
突然の彩乃の質問に、樹は答えを失った。
なぜ彩乃さんが、自分と理事長が会ったことを知っているのか。
「驚いたみたいね」
「な、なんで……、ですか」
「あなたは知らないのよ。あたしと理事長がどういう関係か」
「えっ……?」
「あたしと理事長はねぇ、あなたとあたしがこうなるずっと前から、こういう関
係なの」
「……」
「別にあなたを裏切ったつもりはないのよ。それどころか、あなたとはこれから
も上手くやっていきたいと思ってるわ」
「それは、あたしも……」
「だからあえて、いい機会だから言っておくけど、あたしは政界に出るつもりは
ないわよ」
「はい? 政界?」
「あらっ、ここにきて惚けるの?」
「いいわ、それじゃ聞かせてあげる」
彩乃はベッドから降りると、小さなレコーダーをベッドのサイトテーブルから取
り出した。
「これよ」
スイッチが入れられたレコーダーから、二人の人物に会話が聞こえてきた。

「理事長。どうぞ宜しく、お力添えを賜りたく存じます」
「まぁ、あなたも気が早いわねぇ。それはまだまだ先の話でしょう」
「えぇ、まぁ……、でもこういったことは……」
「彩乃さんご自身は何て? 本当に選挙に出馬する意思がおありなのかしら?」
「彼女はまだ、そこまでの意思は固まっては……、いないようなんですが……」
「そうでしょう? どっちかというとあなたが、彼女のマネージャーから政策秘
書に、そしてゆくゆくは……、そうじゃなくて……」
「いえっ、あたしはそんな……」
「あらっ、どうかしら? 優秀な頭脳と政治的な才覚、それにこうした交渉ごと
も得意なようだし」
「とんでもありません」
「今のあなたには連城彩乃は大事な金の卵。でもその卵から雛が生まれたら、そ
れを食べて大きくなるのは小早川 樹、あなたなんでしょう?」

ここでレコーダーのスイッチは切られた。

「こ、これは……」
確かににこれは数週間前の日曜日、瑠璃川学園の校舎裏の駐車場で、理事長の車
の中で話した内容だ。
「理事長がねぇ、録っておくおいてくれたの。一応って」
ここまで聞かされては。樹は観念したように目を閉じた。
「……そうですか」
「金の卵から雛が生まれたら、それを食べて大きくなる。何度も言うけど、あた
しは選挙なんかに出馬しないし、政界に出るつもりもない。だから金の卵から雛
が生まれることもない」
「はい」
「それが嫌なら、別の餌を探すことね」
「あたしは、そんな……」
「わかってるわ。これはあなたがあたしの為を思ってしてくれたこと。そうでし
ょう?」
「はい」
それは彩乃の出した助け舟に、すがりつくような返事だった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土