5 "百合と柘榴"の間" に女将と麗子を残し、良子は大浴場へと向かった。部屋に残った二人は、揃って寝室へと入った。大浴場は視界が聞かぬほど湯気が立ちこめていた。良子はかけ湯をし、プールのように大きな湯船に身を沈めた。白い湯気に目が慣れるコトはなく、反対側の壁など何も見えない。それでも人の気配は無く、この大浴場を独り占めだと思っていた。 "その音" がするまでは……。その音、それはこの大浴場へと入る扉が開く音だ...