10シトロエンは四角いブレーキランプを光らせて、夢女の正門前で止まった。決して涼しいとは言い難い車内から、エマとリンダはキャンパスを覗いた。車内からでも見える池の周りのベンチに、数人の学生が座っている。「ここが夢女だ。今はちょうど昼休みだな」「20分くらいで着きましたね」エマはどこからともなく扇子をだすと、それで顔を仰ぎ始めた。もう顔はキャパスを見ず、正面を向いている。「校舎の5階、最上階の真ん中に...