花散る午後プロローグ奈津子はシャワーを止めるとバスルームのドアを開けた。空調の効いた部屋に白い霧が広がり消えていく。濡れた体のまま白いバスローブを羽織ると、髪を拭きながらバスルームを出た。ライトブラウンの壁に、スタンドの間接照明が万華鏡のような陰を作っている。部屋にはシングルベッドが1つ置かれ、皺1つないシーツから大きな枕が顔を覗かせている。ベッドのサイドテーブルには、旅...