59沙也加は千鶴への想いを胸の中に留めたままでいた。今の千鶴にこの想いを伝えても、彼女を混乱させるだけなのは分かっている。まして千鶴の心は完全に鏡一に向いてしまっている。鏡一という彼がどんな男なのか、沙也加に興味はない。ただ千鶴を苦しめている張本人と言うだけで十分だった。それから1週間、2週間、鏡一からは何の連絡もなく、千鶴の携帯は何の着信音も鳴らぬまま、1ヶ月の時が流れた。その間、千鶴の足のリハビ...