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あなたの燃える手で

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ちゃんと抱いて

10
「ふっ~。サッパリしたね、舞ちゃん」
「うん」
「はい、タオル」

里美さんから白いバスタオルを受け取ると、それを体に巻いてバスルームから
出た。そして2人で並んでベッドに腰掛けた。
「ねぇ、舞ちゃん。あの夕日、綺麗だったね」
里美さんの濡れた髪、とってもセクシー。あたしもこんな女性になりたい。

「うん。海に沈む夕日なんて……、久しぶりに見た。あっ、そうだ」
あたしは立ち上がると、ハンガーに掛かったワンピースのポケットに手を入れた。
「ほらっ、これ。海で拾ったんだ」
それを掌に載せて里美さんに見せた。
「へぇー綺麗ね。可愛い。桜貝かしら?」
それはまるで夕日に染まったような、2枚貝の片側だった。
「この貝も最初は2枚で一つだったのにね」

何故かあたしはセンチメンタル。
今この時を、里美さんと一緒にいられるこの幸せをなくしたくない。
そんな想いからかもしれない。
「離ればなれになっちゃって、もう1枚、何処行っちゃったんだろうね」
「そうね」
里美さんもチョット寂しげにそう答えた。

そのときのあたし、どんな顔でこの貝を見ていたんだろう?

だって里美さん、ワザとらしいくらい元気に
「ジュースで飲もっか」
なんて言うから……。
「うん、飲もう。とりあえずコーラ」
別にそれほどあたし、ブルーになってないよ。里美さん。
里美さんは小さな冷蔵庫を開けると、缶コーラを2つ取り出した。
「はい、お待たせしました。こちらコーラになりまぁ~す」
おどけた調子で、里美さんがあたしに缶コーラを渡した。
その笑顔に、あたしも思わず笑顔になる。

そしてあたしにピッタリとくっついて座った。
「それじゃ、とりあえず乾杯といきますか」
「こういう時ってナントカに乾杯、とかって言うんでしょう?」
「んん~そうねぇ、それじゃ、2人の夏に、そして今日という日に」
そう言って、缶コーラを持った手を目の高さに挙げた。
「2人がずっと、ずぅ~っと一緒にいられますように!」
あたしも里美さんの手の横に、缶コーラを並べるように挙げた。
「カンパ~イ!」
缶をぶつけて、一緒に一口飲む。

あたしは本当に里美さんとずっと一緒にいたい。本当だよ、里美さん。

「ふぅー! 美味しい」
里美さんがあたしの飲みっぷりを、目を丸くして見ている。
「あぁー、生き返るぅー」
「舞ちゃん、オヤジみたい」
2人で笑った。おしゃべりをしていると缶はすぐに空っぽになった。

そして沈黙。
それは一瞬のことだったのかもしれない。
でも2人の気持ちを確かめ合うには、十分な時間だった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土