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あなたの燃える手で

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 W inter Angel

2006・クリスマススペシャル
 

         Winter Angel


ー プロローグ ー
雪の舞うクリスマスイブ。
街の喧噪をよそにこの館は静かな夜を迎えていた。庭の木々に音もなく雪は降り積もり、ゆっくりとその姿を白く変えつつあった。
静まりかえる深夜の廊下を、メイド服姿のマリアが歩いている。
やがて彼女は麗子の寝室のドアの前に立った。触りもしないドアは彼女を招き入れるように開き、マリアは麗子の眠るベッドの脇に立った。
まだ眠りについたばかりだったのか、気配を感じた麗子が目を覚ました。
「マリア。どうしたの?」
羽根枕から上半身を起こした麗子が、目を丸くして言った。
「麗子様、今日まで本当にお世話になりました」
そう言ってマリアは深々と頭を下げた。
「マリアはイブの今夜、天国に帰らなければなりません」
頭を上げたマリアのその瞳には、溢れそうな涙が震えている。
「何を言ってるの?マリア」
マリアは背を向けバルコニーに出た。そして麗子に向き直る。
身を切る外気がマリアの息を白く変えた。深夜の闇の中で、マリアの体の輪郭は淡い燐光を放っている。
マリアが大きく深呼吸するようにその胸を波打たせると、背中から大きな天使のような翼が現れ、その体はゆっくりと宙に浮き上がった。
「待って、待ってマリア。あたしはあなたがいないと・・・」
マリアは無言で優しい微笑みを麗子に返した。その顔に二筋の涙が流れた。
やがてつま先はバルコニーの柵を越え、マリアの体は上昇を続けた。
「さようなら、麗子様。マリアは麗子様のこと、ずっと忘れません」
「待って、待ちなさい」
マリアは麗子に背を向けると、降りしきる雪の中を天高く消えていった。
バルコニーに白い羽1枚だけを残して……。
「マリアー!マリアー!」

麗子は半ばうなされるように目を覚ました。
「いやな夢。マリアがいなくなるなんて・・・」
今日は22日。イブまではまだ2日ある。しかし夢にしてはあまりにリアルで、今も記憶にハッキリと残っている。
「まさか、そんなことあるわけないわ。マリアが天に帰るなんて・・・」

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土