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あなたの燃える手で

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マリアと響子


アマデウスでの出会いが、響子との最初の出会いだった。

今にして思えば、二人がこういう関係になったのは、必然だったのかもしれ
ない。だってそれからすぐ、あたし達は女同士の関係になったのだから。
それはまるで、神様がそうしたかのように……。

あたし達が住んでいる街は『夢の森』という街だ。
この街には夢の森駅という駅があって、街はこの駅の西口と東口で大きく二
分されている。
西口にはバスターミナルや幹線道路、そして響子と出会った『カフェ アマ
デウス』のある商店街も西口だ。
東口は昭和の街並みを残す雰囲気で、この街の多くの人がお世話になったで
ろう白亜の巨塔、『夢の森病院』がそびえ立っている。
そんな東口の街並みの中に、あたしと響子が偶然再会することになる、『夢
の森神社』はあった。

夢の森神社での再会、それは縁日の夜だった。
その日あたしは、麗子様と縁日に来ていた。女社長である麗子様は基本的に
出不精で、今夜を逃せば次はいつになるやら……。
縁日の神社は、参道の両側に並んだ提灯が、夏の夜風に揺れていた。
石畳の参道の両側には、綿菓子、金魚掬い、射的などが所狭しと賑わい、お
好み焼きやイカの丸焼き、そして焼きとうもろこしの焦げた醤油の香りが、
絶えず鼻をくすぐってくる。
そんな石畳の上を、あたしは浴衣を着て麗子様に手を引かれていた。

「麗子様も浴衣着ればいいのにぃ、ジーンズにTシャツなんて……」
「いいのよ、あたしはこれで……。マリア、あそこにリンゴ飴あるわよ」
「あっホントだ。麗子様、食べますぅ」
「あたしはいいわ。食べたかったら食べなさい、マリア」
「はぁ~い。食べたいから食べまぁ~す」
あたしは麗子様から貰った小銭を手に、飴屋さんに駆け寄った。するとリン
ゴ飴の隣にイチゴ飴を見つけた。長い串にイチゴが五つ、焼き鳥のように刺
さっているあれだ。
あたしはリンゴ飴をやめてイチゴ飴にした。だってリンゴ飴は重いから。
そしてリンゴ飴を片手に麗子様の元へ戻ろうとした時、目の端に見覚えのあ
る顔が……。
響子ちゃん? うん間違いない。響子ちゃんだ。
「響子ちゃ~ん」
あたしは思わぬ再会にテンションが上がり、イチゴ飴を持った手を振って叫
んでいた。
見れば響子ちゃんは、アマデウスのママさんと一緒のようだった。
響子ちゃんはこちらに気づくと、あたしよりも大きく手を振り返してきた。
人混みを縫いながら、あたし達の距離はすぐに縮まった。
「マリア~、偶然だねぇ」
「うん、偶然だょ~」
麗子さんはママさんと会釈を交わし、その後響子ちゃんに紹介されて、ママ
さんは『加納良子』と言う名前だと知った。
あたし達はあっという間に仲良くなり、四人で石畳の参道をそぞろ歩いた。
やがてあたしと響子ちゃん、ママさんと麗子様という歳の近いもの同士がペ
アになり、二組の距離は知らぬ間離れていった。
「マリアぁ、どっか座ろう。疲れちゃった」
「うん。そうだね」

あたし達は座る場所を探しながら、気がつくと神社の裏手に来ていた。


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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土