2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

マリアと響子


コーヒーがテーブルに置かれ、続いてケーキが置かれた。その時カップに伸
ばしたあたしの手に、響子の手が触れた。

「可愛い手。言われません?」
響子はそう言ってあたしの手を両手で挟むようにすると、スルスルと撫で始
めた。
「い、いえ、別に、言われたことないですけど」
そう言って挟んだ手の甲を上にした。
「綺麗な指、爪も可愛い」
「つ、爪……?」
「スベスベで、柔らかくて。女の子の手って感じ」
すると今度は、クルリと返して手の平を上にした。
「手の平も柔らかぁ~い」
「えぇ?」
「手相見せて……」
「は、はい」
響子はあたしの手の平を伸ばす様に、四本の指を反らせた。
そしてあたしの生命線や運命線など、皺に沿って指先でなぞり始めた。
敏感体質なあたしはその時ちょっとだけ、でも思ったより性的な快感を覚え
て「あぁん」と声を漏らしてしまったのだ。
「んん? どうしました?」
響子はそう聞いたけど、でもこれは絶対、確実にあたしが感じてしまったこ
とがバレれていると思った。
「い、いえっ、なんでも……」
「そうですかぁ? もしかしてぇ……」
「えっ?」
「もしかして、感じちゃいました?」
感じちゃいました? は声をひそめて囁いた。
「そ、そんな……、あたし別に感じてなんか……いま……せん」

あたしの声は尻切れトンボになっていく。そんなあたしの声に重なる様に、
響子が小声でこう言ったのを、あたしは今でも忘れない。
「あたし女の子好きなんです。お客様も……、でしょ?」
そう聞かれて「はいそうです」とは言えない。でも男の人よりはずっといい
と思っている。
そして響子は続けてこうも囁いた。「お客様Mでしょう」と。
「た、多分……」
そんな返事を返したけれども、この人 "鋭い" と思った。
「やっぱりねぇ~。あのぉ、名前聞いてもいいですかぁ?」
「えっ、えぇ、マリアっていいます」
「マリアぁ? なんて可愛い名前……。そっかぁ、よく見ればお人形さんみ
たいに可愛いもんねぇ」
囁きから通常に戻ったその瞬間は、女子校の昼休みのようだった。
でも "よく見れば" は余計だ。
「そんなことないですよぉ」
「そうだよぉ、あたし響子。よろしくね」
「あっ、はい……」
そう言ってあたし達は握手をした。
その時、厨房の奥からママさんの声がした。
「響子ちゃ~ん、なにしてんのぉ~…お客様よぉ~」
「はぁ~い。今行きまぁ~す」
「ねぇ、絶対また来てね」
「うん」

このアマデウスでの出会いが、響子との初めての出会いだった。


Comments 0

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土