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あなたの燃える手で

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マリアと響子


マリア響子

PROLOGU 
その日マリアは、久しぶりに『カフェ アマデウス』を訪れた。
「いらっしゃいませぇ~」
「きょ~こっ」
「マァ~リアっ」
響子はマリアの後ろを、店の奥へと歩いていく。
マリアは店の一番奥にある、いつものソファ席に座るとバッグを隣に置き、
スマホを取り出してテーブルに置いた。



マリアはスマホを手にすると、画面に指先で触れた。
そんなマリアを見下ろしながら、響子が言った。
「ねぇマリアぁ、あたし達出会って何年になるかなぁ? 初めて会ったのっ
て、あたしが大学に入った頃だっけ?」
「うぅ~ん。確かぁ~、あたしが麗子様のところにぃ、メイドとして住み始
めてすぐの頃だったと思うからぁ、そうかもねぇ」
そう言ったマリアが、スマホの画面から響子を見上げ、ニッコリ笑った。
「そっかぁ。その頃かぁ。で……? 結局何年?」
「何年だろ……」
「まっ、いっか……。で? 注文は?」
「いつものブレンドとぉ、えぇ~っと、ケーキはなにがぁ~?」
マリアが "困ったちゃん" の上目遣いで響子を見上げる。
「今は季節限定、紫陽花のケーキがオススメでございます」
「おぉ、なんと紫陽花とな……。じゃぁ、それ……」
「でもさぁ、あたし達。まさかこんな関係になるなんて、思ってもみなかっ
たよね、マリア」
「うん。二人とも歯車がピッタリはまった感じだったよね。ヤリたい方とヤ
ラレたい方っていうか、ねぇ~……」
「まぁ……、一言で言うならSとMの相性かな」
「そういうことになるのかなぁ」
「そういうことになるでしょう」
響子はママへ注文を伝えに、奥の厨房へと歩いて行った。
一人残されたマリアは、当時の記憶を呼び起こし始めた。


何年か前、初めてこの店を訪れた時、響子はもうバイトをしていて……・。
あの時も確かこの席に座った。そして今日と同じように、注文を取りにきた
のを覚えている。
初めて見る響子はボーイッシュな髪にミニスカートを履いて、とっても綺麗
な脚線美を客に披露しながら店内を歩いていた。

「いらっしゃいませ。ご注文は……」
「えぇっと、ブレンドください」
「はい。あのぅ、よかったらケーキもいかがですか? ここのチーズケー
キ、ママさんの手作りなんですけど、とっても美味しいんですよ」
「へぇ~、手作りぃ。じゃぁ、チーズケーキも……」
「はぁ~い。ありがとうございまぁ~すぅ」
返事をしながら、響子の目はあたしを見ていた。 "見ていた" というより、
 "見つめていた" と言った方が正確かもしれない。
その目は熱く絡みつくようで、あたしはイソギンチャクに捕まった子魚を想
像した。もちろんイソギンチャクが響子で子魚があたしだ。
注文を受けた響子は、今も同じ様に奥の厨房にいるママさんに、注文を伝え
に行った。
しばらくすると響子は、トレイにコーヒーとケーキを乗せて戻ってきた。
「どうぞ、ブレンドと、チーズケーキでぇ~す」
「はい」
コーヒーがテーブルに置かれ、続いてケーキが置かれた。その時、カップに
伸ばしたあたしの手に、響子の手が触れた。

イソギンチャクに、小魚が刺された瞬間だった。


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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土