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あなたの燃える手で

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ダブルフェイス



ダブルフェイス
             

PROLOGUE
「まだまだ男性優位のこの日本でございます。このような風潮の残る今の
日本の現状を鑑み、もう黙っていられない。何とかしなければならいと、
わたくしはここに出馬致した次第であります」
ターミナル駅の出口の一角。そこに止められた選挙カーの上から、『天宮 玲』は声高に演説を続けた。
「ありがとうございます。ありがとうございます。天宮玲、天宮玲でござ
います」
白いシャツに元気なオレンジのジャケット。そこに名前を書いたタスキを
掛け、白い手袋をした左手にマイク。右手は高く掲げ、常に全方位に向け
て振り続けている。
「わたくしは女性の更なる地位向上を目指し、女性同士手を取り合い肩を
組み、この様な風潮を国政に訴えてまいります。あえて言わせていただけ
るなら、わたくしは "男尊女卑" ならぬ、 "女尊男卑" を謳っていきたい。 
これからも "男には任せておけない もう待てない" 。を合言葉に頑張って
まいります。天宮玲、天宮玲でございます」
玲は体を右を向き左を向き演説を続けた。



女性の地位向上を謳う彼女の支持者は当然女性が多い。事実、今この選挙
カーを取り囲んでいる50人近い人々のほとんどが女性だ。
そんな女性ばかりの支持者に囲まれた選挙カーの運転席で、スケジュール
確認をしていた天宮玲の議員秘書『白鳥千鶴』は、一人の制服姿のJKに
目を止めた。
彼女は女性達の輪から離れ、一人後ろの方で両手を胸の前で組み、まるで
神に祈りでも捧げている様なポーズで演説を聴いている。
その場所がちょうど車の正面にあたる為、ふと目を上げた千鶴の目につい
のだった。

「あらっ、あの子可愛いわね……」
彼女までは距離にして20メートルはあるだろうか。銀縁メガネの奥の玲
を見上げる愛くるしい目。そのメガネに掛かるおかっぱの様に切り揃えら
れた前髪。そして少し微笑んだ様な赤い唇は、どこか大人めいている。
一目で運動音痴とわかる物腰は文学少女を思わせ、少し陰のあるところも
ミステリアスで、大人しそうな彼女によく合っている。しかしその制服の
スカートは短く、形のいい脚のほとんどが露出していた。
一方千鶴はキリッとした目に鼻筋が通り、薄い唇はどこか隠微な感じだ。
秀才を思わせるを端正な顔立ちで、膝の上に置いたノートパソコンに目を
移すたび、頬の横で巻き髪がユラユラと揺れた。
「さてっ……。あとは……」
千鶴はセミロングの髪を両手で後ろに跳ね上げると、制服の彼女からパソ
コンに目をに戻した。

「天宮玲、これからも頑張ってまいります。ありがとうございます」
選挙活動、その演説の時間は決まっている。時刻が来れば速やかに撤収しな
ければならない。
「天宮玲、最後まで皆さんと一緒に戦ってまいる所存です。どうぞよろしく
お願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました」
その声を最後に、玲が車内に戻ってきた。

「お疲れ様です、先生」
「ご苦労様、千鶴」
千鶴は助手席の書類とパソコンを後部座席に置いた。
玲は助手席に座るとタスキも手袋も取らず、すぐに窓を開けて応援者にま
た手を振り始めた。
「ありがとうございます。ありがとうございます。頑張ってまいります」
千鶴がゆっくりとアクセルを踏むと、支持者に囲まれた車は、選挙事務所に
向かってユルユルと走り出した。
千鶴は制服の彼女を思いだし、横目でチラリと窓外を見た。すると彼女は腰
を九十度に曲げてお辞儀をしていた。
「選挙権もないのに、ずいぶん熱心な子ね……」
「なぁに? どうしたの? 千鶴」
「今日の先生の演説を、ずぅ~っと聞いてたJKがいたんですよ」
「JKって、女子高生……?」
「はい。可愛い子なんですけどね。何なんでしょうね。まだ選挙権もないの
に……。あれはもう支持者というよりファンですね、ファン」
「ファンってぇ……、芸能人じゃあるまいし」
「だって、こうですよ、こう」
千鶴は両手を胸の間で組むと、憧れの人を見る様な顔で斜め上を見た。
「ちゃんとハンドル握って、前見て。もう。うふふっ、なぁに、それっ」
「だからファンですよ、あれは完全に先生のファンです」
玲と千鶴の目が合った。二人の視線は熱く絡まり怪しい会話を交わした。
「まぁ、いいわ。それならそれで……。でっ、明日のの予定は?」
「明日はお昼からですね。場所は夢の森駅西口のバスターミナルです」
「あらっ、近いのね」
「はい」
「ちゃんと信号守って、黄色だったら止まってよ。制限速度も守って……」
「大丈夫です、先生。教習所時代を思い出して運転しますから」
「そうね、それくらいでちょうどいいかも」

明日は土曜日。もしかしたらあの子が来るかもしれないと、千鶴は思った。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土