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あなたの燃える手で

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緋色の奥義

其の十四
鎌倉の海岸に注ぐ滑川。その橋の下で、百舌と桔梗は互いの股間に顔を埋
め、動かなくなっていた。
そんな鎌倉における二人のくノ一の戦い、その勝敗は艶魔衆、淫靡衆それ
ぞれの谷に伝えらえていた。


艶魔衆の住む艶魔谷。その際奥部に建つ艶魔堂。
艶魔衆頭領『無空』が、 "桔梗引き分け" の知らせを受けたのはたった今の
ことだった。無空は静かに立ち上がると、庭の池の鯉を眺めた。
「そうか桔梗。うぬは引き分けか……。引き分けなら負けなんだというこ
と。ようやったわ。まぁ、ここは痛み分けというところじゃな……。されど
奥義書は未だこの手には。されば奥義書は残り一人、お蘭に委ねられた」


淫靡衆の住む淫靡谷。その最奥部に建つ淫靡楼。
淫靡衆頭領『幻空』が、 "百舌引き分け" の知らせを受けたのはたった今の
ことだった。無空は静かに立ち上がると、庭木に止まる小鳥の声に耳を澄ま
せた。
「そうか百舌。お前のことじゃ、また油断したのじゃろう。お前の術は敵の
体を自由に操る故、それが油断につながる。あれほど油断大敵と念を押した
ものを……。されど奥義書が閻魔衆の手に渡った訳ではない。奥義書の行方
は、残りの梟に委ねられた」



百舌と桔梗が倒れた滑川。その河口からまっすぐに北上すると、小高い山の
中腹に鎌倉八幡宮はあった。
境内には参道の両側に源氏池、平家池という二つの大きな池を持ち、巨大な
銀杏の横にある長い階段を登れば、そこが本堂だ。その本堂の裏で二人のく
ノ一が向かい合っていた。
「お前が閻魔のお蘭だね?」
「するとあんたは淫魔の梟、ってことになるわね」
「さて、あたしたちがそれぞれ三人目。奥義書を懸けて、いざ勝負といこう
じゃないか」
「いいわねぇ。見た所お互い四十路の坂は昇ってるようだし。歳は言い訳に
できないからね」
「もちろんさ」
二人は境内の裏山を、あっという間に駆け上っていった。
「この辺ならいいだろう。ここまでは誰もこない」
「そうね、邪魔は入りそうにないわ」
すると、艶魔のお蘭が服を脱ぎ始めた。
「わかってるねぇ、あんた」
それを見た淫靡の梟も、釣られるように脱ぎ始める。
「そりゃそうよ、お互い艶魔と淫靡。このやり方が一番いいでしょう?」
服を脱いだ二人は立ったまま向かい合い、お互いを観察するように見た。
「ふっ、いい熟れ具合だねぇ。酸いも甘いも嚙み分けるって感じだ……」
「梟、あなたもとっても美味しそう。悦楽には目がないって体ね」
全裸の二人は山の中で、互いの背中に手を回した。二つの鼻がそれぞれの首
筋に近づく。
「花か……。甘い香りだな、お蘭」
「あなたはさっぱりとした、蜜柑のような香りね、梟」
二人は脱いだ服を地面に敷くと、そこに横になった。そんな二人の周りに
は、無数の木漏れ日が差し込んでいた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土