Archive2016年06月12日 1/1
九尾の猫達
19それは体の中からやってきた。最初は湿布を貼った時のような火照りが。次に火照りとバトンタッチするように、皮膚の奥から痒みが生まれてくる。次第に強まる痒み。それはとどまるところを知らず、無制限の痒みとなってリリに襲いかかっていく。当然リリの全神経は、その痒みへと集中していった。「あっ、痒いっ、なんか痒いですぅ」「そう。薬が浸透したのね。だとすると、すぐに本格的に痒くなるわよ」「あぁなんか、ムズムズす...
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2016/06/12 (Sun) 06:02
九尾の猫達
18「薬を塗るだけじゃないって……、一体どういう……」「そうね、これを見せたほうが早いかも」そう言って月子がバッグから取り出したもの、それは習字用の小筆だった。まだ未使用の為、その筆先は真っ白だ。「えっ……? それって……」「うふっ、分からない? これでくすぐるのよ」「くすぐるって、痒いところを?」「そうよ」月子はフタの閉まった容器を傾け、薬を垂らすマネをした。「こやってポタリと垂らして……」「嫌っ、嫌よ。そ...
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2016/06/12 (Sun) 06:01