29七夕の夜。アパートの前でタクシーを降りようとするまひるの前に、千夜の後ろ姿があった。数十分前まで同じラブホの隣同士の部屋にいたとは、二人は知る由もない。「千夜」「あっ、まひる」「今帰り? ずいぶん遅いわね」「う、うん。まひるこそタクシーで帰ってくるなんて。どこ行ってたの?」「仕事よ、仕事……」「ふぅ~ん、そうなんだぁ」「千夜は、どこ行ってたの?」「あたし、あたしはちょっと、友達と会っちゃって、飲ん...