~深夜バス~PROLOGUE 時刻は夜の10時半を回ろうとしている。こんな時間にあたしは、実家の金沢に帰省するため、あるバス停に向かって歩いている。そのバス停は、東京を夜中に出発する深夜バスのバス停だ。頬を撫でる風は冷たく、道の隅には一昨日の雪がまだ残っている。冷えた手をコートのポケットに入れると、バーボンの小瓶が手袋越しに指先に触れた。『LOVE ROSES 』今夜はこれでも飲んで、ぐっすり寝てしまおう。そう思って...